講師 神林 崇 氏
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R6土浦・筑西ブロック合同専門研究会 研修報告書
1.日時 令和6年9月6日(金)14:00~16:00
2.会場 つくば市 市民ホールやたべ
3.演題・講師
演題 「高齢者と勤労世代と若者の睡眠における問題点」
講師 筑波大学 国際統合睡眠医科学兼研究機構
教授 神林 崇 氏
【若者向けのお話】
睡眠外来での日々の臨床的な問題として、朝に起きられない中高生は多い。
睡眠時間と就床・起床時刻の加齢による変化をみても、10~20代は夜型が多く、50代以降になると朝型が増えてくる。
≪睡眠不足症候群≫
慢性的な睡眠不足。日中の眠気、集中力の低下、意欲に低下、いらいら感を呈する。学校と塾での勉強が忙しく、十分な睡眠時間を確保できず慢性的な睡眠不足状態になる。睡眠不足症候群では、休日の睡眠時間が長くなるという特徴。
≪起立性調節障害≫
学童期から思春期に好発。不登校にも繋がるために本人と家族にとって非常に大きな問題。規律時の血圧低下及び血圧の維持困難の問題が主。朝の起床困難、夜の入眠困難などの睡眠問題も併存していることはとても多い。睡眠相後退症候群とも診断が可能な場合が大部分。
≪朝に起きられない中高生≫
起立性調節障害と睡眠相後退症候群は別の疾患概念であるが、相互に併存していることが多くみられる。ともに視床下部の機能不全ではありそう。
「若年性起床困難症」などの病名が好適かも。
≪朝起きられない中高生への対応≫
早寝対策:夜は23時から24時前に寝てもらえるよう、眠前の薬剤を調整。
起床対策:抗精神病薬0.5‐1mgを朝か昼に内服すると翌朝に効く。
≪不登校が主体の場合との鑑別≫
・起床困難が主の場合、朝に起きられない場合でも途中から登校する。入院等して朝に起きれば登校。休日・休暇中も朝は寝ている。
・不登校が主の場合は、入院等して朝に起きても登校できない。休日・休暇中は起きられる。
・何が原因で不登校になっているのか?原因によってタイプが違うため見極めが大切。
【高齢の方に向けたお話】
≪高齢者の睡眠での懸念と課題≫
・レム睡眠の少ない人は、アルツハイマーの発症リスクが高い。
・不眠症自体もアルツハイマーの発症リスクを高める。
・ベンゾジアピン系の睡眠薬はレム睡眠を抑え、転倒は多めではあるが、不眠症を治療しないよりはした方が、アルツハイマーの発症や転倒は少ない。
・認知症における睡眠障害の原因を解明し適切な治療法を確立することが課題。
≪うつ病の基本症状としての睡眠障害≫
・うつ病の9割に睡眠障害。その9割は不眠、1割は過眠。
・不眠+食欲不振・体重減少ー身体症状=うつ病
・一般的な睡眠導入剤で改善しない不眠症を鎮静系抗うつ剤で加療することは理にかなっているかも。
【勤労世代向けのお話】
・日本人は短時間睡眠、長時間労働。
・通勤時間が長いと、鉄道業の収益は増えGDPも上がるが、睡眠時間は短く、労働生産性は下がる。そして、睡眠不足症候群は増える。
・日本は通勤手当があるが、それがよいとは限らない。新幹線通勤等、身を削って幸せになれない。海外では手当てがないため会社の近くに住む。企業も分散し、通勤時間の短縮や交通費削減→生産性、GDP上昇
その他、日頃抱えていた、様々な世代の睡眠に関する質問に対し、1つ1つ具体的な回答をいただくことができました。
「当日配布資料になかった質問への回答」
〇睡眠が短いと太る、という講演を聞いた記憶があります。生活習慣と睡眠と肥満とかの関係が聞いてみたいです。あと、睡眠で寝入りが悪いとか、すぐ起きちゃうとか悩みをかかえている人って多いと思うのですが、気軽に相談できる場ってあるのか聞いてみたいです。
短時間睡眠-->起きている時間長い-->間食増える-->太る
〇不眠=生活習慣病に加えて、不眠と生活習慣病との関係が聞きたいです。あとは最近よくあるスマートウォッチとかスマホで睡眠の測定するやつで、よく「あなたの睡眠は良くありません!」とか言われるのですが、あれって医学的に見たらどうなんでしょうか。中にはあれで相談しに行く人もゼロではないと思うのですが、先生の考え聞いてみたいかなぁと思います。
スマートウォッチとかスマホではあまり正しくないとは思うのですが、それでも良くないとの評価になった場合には、SUIMIN社のインソムノグラフでの検査は試してみると良いかもです https //www.suimin.co.jp
〇「リベンジ夜更かし」と発達障害とその対策について、不眠と発達障害について関係があるのか聞いてみてみたいです。
「リベンジ夜更かし」=日中に自由な時間を得られなかった人が夜の間に自由な時間を取り返そうとして夜更かしする
発達障害では 就寝時間の先延ばし が多いです
発達障害の中でも自閉症スペクトラムでは、不眠や睡眠相後退症候群が多いです
注意欠陥多動性障害では日中の眠気が多いです
〇更年期障害(女性・男性)における睡眠障害について、原因や対策など聞いてみたいです。
ホルモンバランスの変化によると思います 入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒が多いです 治療は不眠のタイプに応じて
〇短時間睡眠の人(ショートスリーパーと言われる人)は、不眠も感じずに質の良い睡眠と思っていたが、「良い睡眠が健康寿命を延ばす」に短時間睡眠の人も該当するのか。生活習慣病とは関連があるのか。聞いてみたいです。
実際の短時間睡眠の人は人口の2-3%で多くは、平日は5-6時間睡眠で週末に睡眠負債を返している人が多いのです。
本物の短時間睡眠の人は寿命が短くなることや生活習慣病になりやすいことはあまり無いと思います。
〇夜勤や仕事の都合などで睡眠が不規則になりやすい人に向けに、良質な睡眠の取り方や対策など聞いてみたいです。
高齢者だけでなく、産後や更年期における睡眠障害と改善方法も併せて盛り込んでいただけたらと思いました。
交替制の夜勤は睡眠が悪くなるのは、致し方ないのです。状況が許すのであれば、勤務時間の固定がむしろ望ましいのです。
○あと、昼食後の午後や研修・会議となると強い眠気を感じるのは仕方がないことでしょうか。
午後に研修・会議があるとすれば、昼食後に10-15分で良いので、仮眠を取っておくと良いです。
○知人で、ぐっすり眠るために市販の風邪薬を服用しているという人がいます。やめた方がよいと思うと伝えましたが、依存度や危険性についてお聞きしたいです。
市販の風邪薬には古典的な抗ヒスタミン薬が含まれているので、副作用としての眠気が顕著で、それを利用して睡眠薬代わりとして使っている感じと思います。 ドリエルも同じ原理です。
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