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令和5年度第1回専門研究会(全体)

更新日:2023年10月11日

講師 大森 純子 氏
講師 大森 純子 氏
令和5年度 第1回専門研究会(全体) 研修報告書

1.日時    令和5年5月26日(金) 13:00~15:00
2.場所    茨城県市町村会館
3.演題・講師 
テーマ 「今、保健師の地区活動を考える」
 演題1 「地区の特性に合わせた地区保健活動について~地区カルテの活用のすすめ~」
  講師 東北大学大学院医学系研究科 公衆衛生看護学分野
      教授 大森 純子氏
 演題2 「地区保健活動 仙台スタイルの紹介」
  講師 仙台市 健康福祉局健康政策課
      課長 佐野 ゆり氏
講演会
 「地区の特性に合わせた地区保健活動について~地区カルテの活用のすすめ~」
 
【保健師の地域づくり・保健師の保健活動で大切な視点】
 市町村それぞれの業務分担が「地区担当制」でも「業務担当制」でも、地域を意識し、「地域の人々の暮らしや健康を守り、人々が望む生活を目指して行われる活動」はすべて「地域づくり」といえる。
〇地域に心が向いていること
〇地域のことを考えながら人と直接話せること が保健師の強み
 保健活動のなかで、地域全体をとらえる視点や日頃の活動を地域全体に結び付けて考える視点が大切である。保健活動のツールとして「地区カルテ」を活用することで、日頃の地区活動について目的から成果まで言語化・可視化できる。
→地区を意識したプロセスは全て「地区活動」といえる。

日々の活動を地域と結びつけて考えることで、地域を意識した「気づき」を得ることができ、「気づき」の蓄積から新たなアイデアやアクションを生み出せる。また「気づき」に蓄積は地区の地域診断を深め、社会資源や住民・関係者・関係機関との協働ネットワークを拡充できる。

【地区保健活動のポイント】
地域・地区に出向くことはもちろん、所内での電話対応や事務を通して、地域・地区活動を行うことができる。以下3つのポイントを意識し、自己点検する。

①住民とのつながりを求める活動
・地域・地区に出向くことを意識している
・住民の声を聴く努力をしている
・住民から地域・地区の情報を得ている(独りよがりな活動になっていないか)
②地域・地区の特性を考えた活動
・暮らし、文化、風習、自然環境、地域資源(目に見えるもの・見えないもの・数字として表れるもの)を考えて活動している
③地域・地区という単位を意識した活動
・個人の支援を地域・地区活動に発展させている
・地域・地区の将来の姿を考えて活動している
・地域・地区診断に基づいて、重点課題や支援方法の検討を行っている。
・保健師の存在や活動、社会資源を住民に対して知らせる努力をしている。

【地域・地区活動による保健師自身、地域・住民への認識】
地域・地区活動は保健師としての充実感、地域・住民への愛着、地域・住民との一体感等への効果をもたらす。以下のポイントを自己点検する。
①保健師としての充実感
・保健師としての活動が楽しい、達成感を得られる、満足している
②地域・住民への愛着
・地域・地区への愛着がある、住民に対して何ができるか常に考えている、住民とつながることができてうれしい
③地域・住民との一体感
・住民から頼りにされている、相談しあえる関係である、住民と共にある存在である、地域・地区の住民の間につながりができていると思う

【地域・地区活動を促進する環境づくり】
地域づくりを行っている保健師は、保健師であるというアイデンティティを持っている。地域づくりを行うことが保健師の能力を培うことに繋がっている。地域・地区に出向くことができる環境が大切。訪問等明確な目的があり出向くことはもちろん、明確な目的がなくとも地区にでることも必要。以下のポイントを自己点検する。
①組織の方針と明確さ
・自治体全体で保健活動と連携する地域・地区づくりの方針がある
・上司や統括的立場にある保健師に、保健活動についての明確な考えがある
・保健師が地域・地区を集団と捉えて保健活動を行うための研修を受ける機会がある。
②地域・地区に関する情報共有の機会の確保
・地域・地区の課題を他の保健師、他職種、関係機関と共有する機会がある
・定期的なミーティングがある
・日常的に保健師相互の情報共有・相談支援の機会がある
・保健師の地域・地区活動について、地域住民に対して広報、知らせる機会がある

【地区カルテの活用】
 日頃の保健活動を地域・地区を結び付け、他にはない特性を掴み、地域・地区を意識しながら活動することが自然とできるようになることを目指す地区保健活動のツール。地区がどうなりたいかをまず話し合い、決定してからカルテを活用する。カルテは経年的に引き継がれることを想定している。カルテの活用で、より効果的な「地区特性に応じた保健活動」を展開できる。

地区カルテは①フェイスシート②日々の記録③サマリーシートで構成されている。
①フェイスシート
 地域・地区の概要を大まかに理解するためのシート。成り立ち、地理的特徴、住民構成など8項目あり、地域・地区活動を通して得られた経験データ含めて記載・蓄積する。気づいたときに随時記録し、「気づき」や情報を蓄積していく。
→「気づき」から始め、地域・地区の特性や課題を焦点化して、明確化していくためのもの
②日々の記録
活動の中での「気づき」を積み重ねるためのシート。居住する住民の暮らしの視点から現状を把握する。重要だと思う内容はフェイスシートに反映させ整理。気づきに対して「考えたこと」「行ったこと」を記載することで、活動記録として残す。
③サマリーシート
強み・弱みを捉え、健康課題を抽出し、実現可能性を考えながら優先順位を決定し、地域・地区活動の実施・評価の具体的な計画を立てるためのシート。

【地区カルテ共有による活用】
・日々の活動の中での気づきや疑問を、主・副担当保健師、エリアの近い保健師間で共有する。
・管理者を含めて、定期的な共有の場を持つ。

公演会
「地区保健活動 仙台スタイルの紹介」
 業務と地区の併用で担当を決めていたが、個別ケースの増加・国や県からの業務が増加したことにより、地区に出ることが少なくなったことから、併用での担当制は継続しつつ、地区分担制を強化した背景がある。

【地区保健活動マニュアルの作成】
 仙台市の地区保健活動推進のためにマニュアル作成ワーキングを立ち上げ、大森教授にアドバイザーを依頼。大森教授からは「継承にとどまらない仙台市の強みを生かすSendai styleの地区保健活動を創りましょう」とアドバイスを受ける。

【マニュアルの内容】
 1仙台市地区保健活動マニュアル作成趣旨
 2用語の定義・・・共有するために共通理解とすることが必要
 3仙台市が目指す地区保健活動
  ・保健活動の現状と課題
  ・仙台市が目指す地区保健活動
  ・地区保健活動の主役は住民
  ・地区担当制を強化した地区保健活動のスローガン
 4地区保健活動の進め方
 5Sendai styleの保健活動
  ・担当地区の特性や健康課題の明確化(みて、きいて)
  ・担当地区の健康課題の共有化(つないで、うごかし)
  ・地区の特性に応じた活動の展開(つくって、みせる)
 6地区担当制のツール
  ・地区カルテの構成
  ・地区カルテの活用
 7地区担当制推進の仕組み
  ・部署横断的会議
  ・統括保健師会議
  ・コーディネーター会議
 8地区保健活動事例集

忙しい業務の中で、情報から分析をするまでの時間がとりにくいため、地区カルテを使用することで、地区の愛着がわいたり、保健師としての力も伸びる。しかし地区カルテをまとめることを目的とはせず、地区に出て住民とふれあい、日々の記録をつける。訪問に行った際に坂が多くベビーカーだと歩くことが大変、バスがなかなか来ない、等ちょっとした気づきで感性を高める。

【地区保健活動例】
〇地区ブロック会議について
区内を各地区の特徴ごと大きく数ブロックに分け、3課の地区担当保健師が集まり、地区ブロック会議を開催。地区の情報共有や地域づくりを話し合う場となっている。
地区保健活動は「見て」「聞いて」「調べて」「つないで」「動かし」「つくって」「みせる」。住民同士の「見守り活動」や「なんでも相談会」、「手洗い講座」「地区活動再開支援」など地区の住民のニーズに応じて活動を展開している。

【地区保健活動マニュアル活用の効果】
1地区保健活動が活発になり新たな展開がある
〇地区への愛着・責任感を持って活動を展開
〇地域の関係者をより多く把握し関係を築いている
〇新たな企画や展開がなされるようになった
2人材育成に繋がっている
〇他課保健師等と地域へ出向く機会が増えた
〇自身の保健活動を振り返る機会となる
〇地区保健活動に対するモチベーションアップ
〇身近なロールモデルが増える

【地区保健活動を推進するために】
1地区保健活動を推進する方針・体制が明確であること
 →地区保健活動を各区要領に位置付けたことで、組織的な体制が整い保健活動が促進された
2地区に関する情報共有の機会の担保
 →他課地区担当との情報共有や課題に関する話し合いで、自分の地区を意識して活動することに繋がる
3「地区」の捉え方の認識
 →「地区」は個別支援のための割り振りという認識から、地区そのものが支援対象であると捉える
4住民との対話を大切に
 →話をしようとする姿勢、聞こうとする姿勢が大切
講師 佐野 ゆり 氏
講師 佐野 ゆり 氏

 

 

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