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平成29年度水戸ブロック専門研究会

更新日:2017年09月22日

講師 海老原 至 氏
講師 海老原 至 氏
平成29年度 水戸ブロック専門研究会報告
期日:平成29年8月31日(木)
会場:茨城県市町村会館201会議室
参加人数:33名

1. あいさつ

国保連保健事業課長 大谷氏より
県保健予防課が事務局となり糖尿病腎症重症化予防プログラム茨城県版作成に着手。専門員会を設置し平成29年度中に策定予定。
市町村保健師連絡協議会 小野村会長より(水戸ブロック長代読)

2. 研修会
 
 演題 『慢性腎臓病(CKD)について』
     ~専門医から見た地域に必要なCKD対策~
講師  水戸済生会総合病院 腎臓内科
        海老原 至 氏

 講師紹介 
   昭和44年9月生まれ
   笠間小学校から茨大付属中学
   水戸一高から北海道立札幌医科大学へ
   平成6年から筑波大学研修医
   平成12年から水戸済生会総合病院腎臓内科勤務 筑波大学准教授兼務
   
 内容 
   ●人工透析の現状
人工透析患者が増加している。就職当初700人に一人が現在は400人に一人。2015年末で324,986人。2020年には増加が横ばいになると言われているが、毎年5,000人増加している。4万5千人透析を開始しているが、3万5千人~4万人が亡くなっている。医療費の3~4%が透析に使われている。いかに透析にならないようにするのが最大の任務。世界の透析人口300万人、世界の10%が日本人。アジアは人口増加に伴い慢性腎不全患者も増えているが、経済的な理由で透析が出来ない人も多い。中国では自費で行っているケースもある。アジア人は腎臓が弱く腎不全に陥りやすい。透析患者の人口密度は台湾が1位。日本が2位。
  ●人工透析導入の主要原疾患
   慢性腎炎が多かったが、1998年に糖尿病が1位になった。腎硬化症が続いているが、以前はその他とされていたものが腎硬化症であったと思われる。腎硬化症は腎の老化によるものであるため、高齢化が進むにつれ、透析患者が増えるのも否めない。
   茨城県は全国11番目。割合で考えると特別透析患者が多いとは言えないが、糖尿病からの導入患者が多いのが特徴。糖尿病のコントロールが重要。
●水戸済生会病院の透析患者の現状
透析導入患者、平成24年85人、平成25年87人、平成26年104人、平成27年100人、平成28年108人と増加。導入原疾患は糖尿病が多く、腎硬化症、急速進行性糸球体腎炎が多い傾向にある。慢性腎臓病の通常の医療費は年間12~20万円前後だが、血液透析だと年間約500万円、腹膜透析は400~800万円必要。心・脳血管障害を合併すると更に高額になる。水戸市でも透析導入を年間8人抑制すると、3年間で1億5千万円の医療費を抑制できる。
   ●どのように腎臓を守ればよいか
   ・早期発見・早期治療。そのために健診や地域での啓発活動が重要
   ・健診で見つかった腎臓病のなかで、積極的に専門医への受診を勧めるか見極める力が大事
   
  ◇症例から学ぶ腎臓病
   透析導入2事例 提示
   事例の共通点 ・無症状であるから放置―症状が出るときには透析が必要な場合も
          ・健診をおろそかにしている
          ・受診したとしてもきちんと通院していない
          ・生活習慣が乱れている
          ・気付いた時にはもう遅くなっている
  ◇腎臓の進化・働き
   腎臓のことを良くわかっている医師が意外と少ない。生物は海から生まれ、海水の中の環境に適応していた。既に腎臓の原型は存在し、海水から必要な養分等の濾過を行っていた。次第に淡水での生活に移るが、淡水の生活ではミネラルやナトリウムが枯渇していたため、必要なミネラルを再吸収する機構を作り上げた。その後、陸上で生活するようになると、更に乾燥に順応するため、少ない水で多くの老廃物を排泄できるよう強力な濃縮力を獲得した。つまり次の役割を発揮している。
     ・体内の老廃物を排泄する
     ・体内のミネラル濃度を調節する
     ・体内の水分量を保つ
     ・体内を弱アルカリに保つ
   
  ◇腎臓病を早期発見するために
   ・日本人の8人に一人は慢性腎臓病。症状が無いからと侮ってはだめ。
   ・肥満は腎機能障害のリスクを上げる。末期腎不全発症率はBMIが高いほど上がる。肥満は血液内に老廃物が大量に出る。濾過が大変!
   ・生命が進化する過程には常に飢餓と隣り合わせ。栄養や塩分が豊富な環境を経験していなかった。このような高齢化も想定外。
   このような背景を理解しておくことが大事。

  ◇発見された腎臓病をどう検査するか
   ・eGFR(日本人用にできた計算式で算出)を用いる。おおまかな陣の残存機能がわかる。
   ・検尿でみつかる血尿・タンパク尿が腎臓病唯一の初発症状。検尿で異常があれば特に注意が必要
     *尿蛋白が2+ 未熟な腎は良く動いたあとに+位出ることがある
     *尿蛋白+で尿潜血+
     *尿潜血2+
     * eGFRが50ml/min/1.73㎡未満:安定している場合(60歳以上)で尿異常が無いときは観察
*特に血圧の高い人、薬を飲んでも下がらない(腎機能低下の可能性)
上記のようなひとは必ず一度腎臓内科へ

   腎臓専門医紹介基準 (医師会向け) かかりつけ医との協力が重要
    ※①~⑥のいずれかに該当するもの
     eGFR値 ①~40歳  60未満
           ②40~70歳 50未満
           ③70歳~  40未満
          ④3ヶ月以内に、30%以上のeGFRの低下
      尿所見  ⑤尿蛋白2+以上
           ⑥尿蛋白と尿潜血がともに1+以上
  ・病歴や検査所見、腎臓の形や大きさ、合併症の有無などから原因を特定していく。
  ・原因を確定するために、腎生検を行う(患者さんの5%程度)
  ・原因がわかったら、血圧を十分下げ、診断に応じて投薬。生活習慣病の改善をすすめる。

  ◇生活習慣の改善
   ●食事療法 原則 高カロリー 低蛋白 塩分制限 カリウム制限
            ある程度以上の飲み水負荷は有効ではない
     ポイント
      高カロリー  高度のカロリー制限は腎機能を増悪させる。
             糖尿病でも腎不全になったらカロリーをふやす。
      蛋白制限   蛋白の過剰な制限はQOLを落とす。
             焼肉食べ放題はNG 
      塩分制限   塩と水は同じ動きをする
             控えすぎに害はないが、元気がなくなる。戦時中兵士を鼓舞するために塩分を与えた説がある
             高齢者に極度に制限すると熱中症を発生したときに弱い
      カリウム制限 高カリウム血症誘発薬の使用で出現する場合がある。高カリウム血症は致死的な不整脈を誘発。
   ●運動制限  合併症による制限がなければ、強い安静指示は不要
          運動をすると、一時的に悪化するが、元に戻ると良い状
態を維持できる(腎リハ学会)
       おすすめの運動  ・子どもと遊ぶ・大工仕事・風呂掃除
          発熱などの全身症状がある時、大量尿蛋白を認める時、腎機能が急速に落ちている時は、主治医と相談を
   ●たばこ 虚血は腎臓に悪影響。臓器で一番影響を受ける。心疾患に
悪いため、絶対避ける
   ●アルコール 少量のアルコールは腎臓病の進行を遅らせる。アルコール換算20g ビール350mlまで

  まとめ  ☆早期発見・早期治療
       ☆腎臓に無理のない生活
       ☆eGFR低下、尿検査以上があれば早めに専門医に相談
       ☆水戸済生会病院に受診する
 ※3年前から慢性腎臓病予防の啓発活動をしている
  9月10日(日)イオンモール水戸内原店にて市民健康講座を開催!


グループワークの様子
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