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令和6年度市町村保健師研修会【Zoom研修】

更新日:2025年01月17日

令和6年度市町村保健師研修会【ZOOM研修】事業報告
日時:令和7年1月15日(水)13時30分~14時30分
演題:「公衆衛生学会での、事例発表について」
講師:常総市福祉部保健推進課 課長補佐 染谷早苗氏

【作成の背景】
平成27年9月豪雨において鬼怒川堤防が決壊し、市の3分の1となる鬼怒川東地区が浸水した。浸水した地区には多くの公共施設があり、各種物品等が使えない状況のなか災害支援を実施せざるを得なくなった。
発災初期における課題として対策本部と保健師及び避難所で情報共有できなかったことと、保健師活動として何を行うべきかわからなかったことがあげられている。この課題への対策として発災直後(フェーズ0)に焦点をあて、どの保健師が参集しても初動活動を円滑に行えるようにすることを目的にアクションカードを作成している。

【作成方法】
保健師による定例会および管理栄養士による定例会の場などを活用し、若手を含む専門職が皆で作成した。作成を進めるにあたり、事務職の視点が必要になったため事務職員を検討の場に加えていった。

【作成時に気を付けたこと】
活動内容を明確にし、簡潔にすること
◆活動内容ごとにアクションカードを作成する
①支持グループ
②情報収集グループ
③記録グループ
④避難所グループ
◆誰がどの担当になっても実施する事がわかりやすいようにする
◆実施したこと、未実施のものを明確にし、漏れが無いようにする
 →チェックできるように
◆若手保健師でも見てわかるようにする

【作成した結果(アンケートより)】
アクションカードを用いた災害シミュレーションへ参加した保健師、管理栄養士の半分以上は「災害経験なし」であったが、訓練によって80%以上の参加者がアクションカードに従い災害活動ができると回答した。一方、シミュレーションを実施しなかった期間が長くなると、アクションカードを用いても災害活動が困難になった。平時における定期的なシミュレーション等訓練が必要である。

【アクションカード内容】
①指示グループ ※本部と各グループを連携する役割
◆各保健師等からの報告で、出勤までに要する時間を考慮し今後の配置計画をたてる(災害対策本部や統括保健師と一緒に)
◆職員の出勤状況確認。上司へ報告
◆本部からの指示を各グループへ伝達
 ・記録グループに記録することを指示
 ・情報収集が必要な場合は、情報収集グループへ指示
 ・避難所グループへ指示(ロゴチャット)
◆避難所グループからの依頼について
 ・本部に確認
 ・情報収集グループと検討し指示
 ・情報収集グループの報告をうけ、記録グループへ記録の指示
 ・避難所グループへ指示
◆保健計画立案
◆関係機関との連携・調整
◆受援体制の構築
◆オリエンテーションの計画(場所、時間、内容)
◆通常業務の検討
◆カンファレンスの計画・実施

②情報収集グループ
◆支持グループの指示のもと、情報収集する
 収集した情報を、指示グループに報告
 指示グループの指示のもと、収集した情報をロゴチャットで各グループへ周知
◆保健師避難所グループからの依頼
 指示グループと共有検討し情報収集・依頼対応
 対応した内容を指示グループへ報告
 避難所グループへロゴチャットで報告
◆記録グループへ情報記載依頼
◆庁内関係部署との連絡・調整・報告(その都度指示グループに報告)

③記録グループ
◆指示グループや情報収集グループの指示のもと、ホワイトボードに記載する
◆ロゴチャットをみながら、各情報をホワイトボードに記載する
◆依頼・報告・処理済みなどわかりやすく記載する
◆一日ごとに電子化する
◆復旧時期は記録をまとめる
◆広報活動(ホームページ、LINE、母子モ、チャット)
 事業中止等の連絡

④避難所グループ(①いのちを守る、②二次災害防止)
◆指示のあった避難所を巡回する(巡回経路の計画)
◆避難所の健康に関する課題を明確化する →報告・相談
◆福祉避難所が被災当初から開設の場合は、そこに常駐する
 ただし、フェーズ2になった時点で8時間交代とする
 また、派遣看護師を依頼し福祉避難所に常駐してもらう
◆避難所で対応困難となり自己判断できないときは、指示グループに連絡し指示をもらう
◆DMAT等巡回時に診察をうける優先順位の対象者を受付係に伝える

【取手市情報】
取手市は災害時のどの状況でも誰でも災害活動がとれるよう災害時アクションカードを作成している。
初動時、参集時、避難所立ち上げ時のほか平時の活動について作成している.

【Q&A】
Q アクションカードはどのようなものか
A 災害時に行うことを箇条書きにしたカード

Q 受援体制など準備しておいたほうが良いものは?受け入れ時の注意点
A 常総市は準備が十分ではなかった。
災害時保健活動マニュアル等を渡されたが、発災直後に読みこむことは困難であり、平時に理解しておくべきものであったと思う。
保健師数や活動内容をふまえ、支援者に何をしてもらいたいか考えておくことが大切だと思う。
支援に入る保健師は「なにやりましょうか?」と聞くのではなく、自発的にやるべきことを提案してもらえるとありがたい。発災後10日間程度は自主的に活動できる保健師が望ましい。避難所運営を率先して行った自治体や、事務用品持参で支援に入り記録を整理して帰った自治体はありがたかった。
受け入れ時の注意点は、最新の情報を提供することの大切さだと思う。
自分の持ち物であってよかったもの→体拭きシート、洗口液、生理用ナプキン
       あればよかったもの→モバイルバッテリー、めがね
 
Q 保健師の役割は
A 災害後の72時間は①いのちを守る②二次災害に防止に努めるため 
保健師は課の枠をこえて、避難所の市民の救護介助等にあたることとなっている。

Q 災害時の参集方法
A 本部の(部長・課長)と調整検討し、庁内のビジネスチャットツール(ロゴチャット)で指示し参集する。(参集場所等)

Q アクションカードは保健活動マニュアルとどのように連動しているのか
A 保健活動マニュアルとは連動できていない

常総市では要配慮者・支援者については電子連絡帳に入力されており、タブレットを用いて情報利用が可能となっている。
要配慮者・支援者等への安否確認は一般事務職員が実施している。保健師は生命に関わる分野での活動として避難所対応をする。要配慮者・支援者が避難所に来ていると判明した場合は避難所において必要な支援を実施する。

【他市町村でのアクションカード作成に向けて】
アクションカード自体はすぐ作れるが、実用レベルに至ることは簡単でない。
先輩保健師が頑張って作りがちだが、若い保健師も作成することでカードへの愛着も沸く。作ったばかりが理解度も高いため作っただけではなく定期的なシミュレーションを続けて使える状態を維持してほしい。



研修の様子
研修の様子

 

 

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