講師 森田由香先生 (一財)茨城県メディカルセンター 視聴覚課職員4名
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1.日 時 令和4年7月22日(金)午前10:00~11:30
2. 演題・講師 『3歳児健診における視覚検査のポイントや重要性について』
演題1『3歳児健診における視覚検査について~屈折検査導入編~』
講師 一般財団法人茨城県メディカルセンター
総合健診部視聴覚課職員4名
視聴覚課長 立原 理 氏
視聴覚課 主任 藤田 晴香 氏
視聴覚課 視能訓練士 和田 由美子 氏
視聴覚課 視能訓練士 朝日 千瑛 氏(発表者)
演題2『眼科における3歳児健診の重要性について』
講師 視覚委員会委員 森田 由香 先生(筑波大学附属病院眼科 病院助教)
3.内 容
(1)開会 司会 境町 山川 敬子
挨拶 会長 日立市 高橋 くに江
(2)講演会
演題「3歳児健診における視覚検査のポイントや重要性について」
演題1.「3歳児健診における視覚検査について~屈折検査導入編~」
講師:一般財団法人茨城県メディカルセンター 視能訓練士 朝日 千瑛氏
○3歳児健診での視覚検査実施の目的
・視力の発達を妨げる目の異常や病気の早期発見をし、早期治療に繋げること。
○視覚検査実施のポイント
・検査場所は直射日光の当たらない、明るい部屋で行う
・指標から子どもの目までの距離が2.5mになるよう椅子などを合わせ、指標の高さは
目の高さにする。
身を乗り出すと距離が変わってしまうため、子どもに寄り添うスタッフを付ける。
・遮蔽はハンカチやガーゼを当てるなど、隙間ができないようにする。
遮蔽すると急に嫌がる、嫌がり方に左右差がある等、弱視を疑う様子が見られることもあるので、遮蔽した時の様子もよく観察する。
・視力測定時、目は細めていないか、顔を動かしてみていないか、片目をつむっていないか、目の位置がずれていないかを確認する。
これらの様子がみられれば、眼科受診につなげる。
○症例からわかること
・3歳3か月で3歳児健診で左眼視力不良と指摘されたケース
初診時 左視力0.2→眼鏡処方とアイパッチ訓練→5歳1か月で左視力1.0に↑
・4歳10か月のケース
初診時 右視力0.2→眼鏡処方とアイパッチ訓練→5歳10か月 右視力1.0に↑
・6歳3か月のケース 3歳児健診では異常なし。眩しそうにしている様子あり受診。
初診時 左視力0.1→眼鏡処方とアイパッチ訓練→左視力0.4までしか回復せず
⇒弱視の治療にはリミットがあり、治療開始のタイミングが大切。
3歳児健診は弱視を発見し、治療の成果も望める適切な時期である。
集中力がない、理解できないという理由で視力検査ができない場合もあるが、そのような
中にも弱視で見えていないケースもいる。
○スポットビジョンスクリーナー(SVS)とは
・屈折異常や眼のズレ等を他覚的にスクリーニングできる検査機器
・利点:数秒で接触せずに両眼で測定できる。抱っこで測定できる。
欠点:顔が正面を向いていない、測定環境などで結果のばらつきがある。
測定に必要な瞳孔の大きさがないと測定できない。
結果が正常でも疾患がある場合がある。白内障や眼底疾患等。
・SVSを取り入れた3歳児健診においては、屈折検査(複数回測定し、データは保存する)
問診、視力検査、診察を行い総合的に判断する。SVSデータを渡して受診勧奨する際は、保護者に過剰な心配を抱かせないため、必ず封を閉じること。
演題2.「3歳児健診における視覚検査の重要性」
講師:筑波大学附属病院眼科 病院教授 森田 由香氏
○弱視とは
・眼鏡をかけても視力が出ない状態で有病率は2%。40歳以下の片眼失明の1番の原因。
・弱視の中で幼少期に適切に見る刺激を受けずに見えない状態になったものを機能性弱視
といい、早期に発見し、適切な治療で正常な視力の発達が可能となる。
・両眼性の弱視の場合は、物に近づいたり、目を細めたりし、周囲が気づくが、片眼性の弱
視の場合は、症状はなく、本人の訴えもほぼない。感受性期間が過ぎると不可逆的な視力障害になり、治療にタイムリミットがあるため、3歳児健診での発見がとても大切。
○斜視とは
・外斜視、内斜視が多い。原因には眼球を動かす筋肉や神経の異常、家族性、スマホなどの
見すぎ等があるが、ほとんどは原因不明。
・外斜視の分類:間歇性外斜視(正常のときもある)、恒常性外斜視(ずっと外斜視のまま)
・外斜視の症状:眩しがる、片目つぶり(片目つぶりによる転倒)、読書困難、頭痛等
・調節性内斜視は3歳児健診の斜視で最も多い。遠視が原因で過剰に眼球が内側に動くこと
でピントを合わせようとする。初期は時々内斜視になる程度だが、少しずつ悪化し、斜視
眼から弱視になることがある。眼鏡装着により目の位置を正しく戻せる。
○3歳児健診での視覚検査の課題
・1次検査(家庭での検査)
検査する時間がない、大丈夫だと思った等、42%が自宅での視力検査を行っていない。
⇒弱視・斜視を見逃す可能性大。
・2次検査(保健センターでの検査)
屈折検査が行われているか、視能訓練士が実施しているか、眼科健診のみ別日程課等、
自治体による格差が大きい
・3次検査(眼科受診)
治療にタイムリミットがあることを知らない、眼科に受診しても検査できないと思ってい
た、本人が見えないとは言っていない等、未受診率30~35%。
⇒現行の方法では半分以上の弱視患者が見逃されている可能性がある。うまく機能していな
い実態から精度をあげることが急務。
○2021年日本弱視斜視学会で発表「茨城県の3歳児眼健診 現状と課題」
・調査結果、検査方法、判定基準、事後追跡が自治体間で統一されていないことが判明。
・自治体の屈折検査導入は36%
→屈折検査導入及び適切な検査体制を整える必要がある。
・自治体からの要望として、県で検査内容や要検査基準を指導してほしい、視能訓練士の派遣について基準がほしい、紹介できる眼科を教えてほしい等がある
・地域格差解消のための課題として、検査方法の定期講習、屈折検査機器導入の補助・貸出、
移動検診車の活用等があげられる。
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