講師 森 悦子 氏
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令和元年度茨城県市町村保健師連絡協議会 ブロック別研修会(日立ブロック)
研修 議事録
期日:令和元年8月30日(金)13:30~15:30
場所:日立市保健センター 4階
出席者:32名
13:30 開会
司会:緑川(市町村保健師連絡協議会)
13:30~15:00 講演
〈演題〉言葉の遅れや発達が気になる子への支援について~事例を交えて~
〈講 師〉つくば児童発達支援教室 言語聴覚士 森 悦子 氏
〈講演内容〉
〇言葉の発達を支えるもの
1対人的コミュニケーション
身体全体を使ったコミュニケーション、新生児期の模倣行動、共同注意、愛着関係
2乳児期知覚・認知発達
聴覚の発達(一番大事)、音声知覚の発達、言葉の認知の発達、語彙の獲得、ことば
の息の獲得と社会相互作用
3最初の言葉が出る前
生後1年間の音声発達、身振り・指差し機能の発達的変化
4発音スキル
音節をつなげられるか、構音できる音のレパートリー、正しい構音を支える条件
〇症例の情報
3歳7か月児 聴力:問題なし IQ100
K式発達検査 認知・適応 100 言語・社会 46
診断名 自閉症スペクトラム障害
状況などの文脈を手掛かりに理解していて、言葉だけでは簡単な単語や指示が全
く理解できていない。
→聴覚以外のルートで言葉を教えていく。
手話+音声言語で呼称、カテゴリー、抽象語を理解させる
ひらがな理解
経過 年少:簡単なことばや指示は理解できるようになった。
年中:理解できる手話が増え、カテゴリーや「違う」「同じ」などの抽象語
も分かるようになり、自らも使い始めた。
年長:簡単な指示は音声言語でも理解できるようになった。文レベルで話がで
きるようになった。
〇自閉症スペクトラムの子が苦手な面
・文脈や状況によって変わる意味
・発音に含まれる意味
・たとえ表現の理解の難しさ
・「ちゃんとしなさい」「だらしがない」などの抽象的な言葉の意味
・教科で使われる分かりにくい言葉:かさ(量)、たんい(単位)、ようす(様子)など
・算数の文章題
・国語の読み取り
・敬語
・推測する力 三段論法
・会話
〇言語指導上の配慮
1前言語期(話し言葉が出ていない時期)
・人とのやり取りの楽しさを味わう機会を増やし、繰り返しその気持ちを言語化して
聞かせる。
2単語獲得期(幼児期初期)
・また構音の発展途上なので不十分な表現でも訂正しない。
・生活場面で見慣れた活動や遊びの内容を言語化し、事物や人の名前、動作語、形容
詞などを使って見せる。
・身辺自立の習慣をつけさせる。
3前期構文獲得期(2~3歳代)2語文が出始める時期
・実際の行動や体験させたことを言語化できるように援助したり、言語化して聞かせ
る。
・感情を言語化できるように、教官体験を通し、感動詞や形容詞を教えていく。
・ものの用途や上位概念語を教えていく。
4中期構文獲得期(年中・年長)
・集団学習の場や学習の差に理解の必要な言葉を確認
・抽象語の意味を教えていく。
〇発達障害のある人への支援
1ことばの配慮
①省略しない完全な文で話す。
②代名詞の理解は困難
③肯定的な表現を使用する。
④命令形・大声は使わない
穏やかに丁寧に話すことが大切。
2状況説明の配慮
①当たり前のことを丁寧に説明
②その場の状況を説明する
見ていても理解しているとは限らない。誤って理解している。
③説明は何度も行う。
3予定の説明
①学習・仕事など毎日おこなうことはマニュアル化して説明する。
②予定についても同じ。
4注意力障害への配慮
①環境調整
②時間の統制(注意集中困難)
5多動・衝動性への配慮
①エネルギーの発散、合法的に動かす
②衝動性 子どもの希望を聞き具体的な行動方法を伝える。代替行動方法の教示。
〇コミュニケーション支援
1社会的理解としての他者視点の取得
2共同注意の支援
3コミュニケーションスキルの支援
〇共同注意の支援
①集団ゲームなどの活動機会の設定
人との楽しい経験をつむ
②活動しやすい環境の設定が不可欠
具体化されたルール
表象機能を促す支援
〇幼児期の対応目標
・子ども
適切な親子関係の構築
情緒の安定(ちょっとしたよい言葉がけ)
・保護者
子どもに対する理解力の向上
子どもへの対処能力の向上
〇偏食について
無理強いするほど食べられなくなる。
栄養学で言われても、食べないものは食べない。
おためしに食べさせてみても、無理強いはしない。
〇発音について
構音 サ行・ラ行は6歳で完成する。
水を飲んだ時、鼻から水がこぼれることが頻繁であれば、粘膜下口蓋裂。児鼻腔閉
鎖の可能性がある。耳鼻科、歯科口腔外科の受診をすすめる。OPEするなら早い
ほうがよい。
〇吃音について
ことばが出てくる時期に出現するもの→7~8割は就学前になおる。
ことばの注意をするのは×。話かける人がゆっくり話をする。
神経を高ぶらせたまま寝かせない。安心して眠れたほうがよい。寝る前は穏やかに静
かに。
〇親支援について
親にも力量がある。親を責めてもしかたない。
細く長く、糸を切らないようにする。母をサポートする。
15:00~15:10 休憩
15:10~15:25
グループワーク
「茨城県保健師人材育成指針【第2版】キャリアラダーの活用について」
①各市町村でどのように活用しているか
1回はつけてみたが、活用しきれていない。
年に1回は付けてみて、自分のスキルを確認している等。
②統括保健師との面談を実施してみて
人事評価制度では定期的に面接を実施しているが、キャリアラダーの面接は実施して
いない所も多い。
自己評価が低く、統括保健師にもう少し上のランクで付けてよいと言われた。等
15:25~15:30
まとめ:日立保健所 保健指導課 石川課長
茨城県保健師人材育成指針は、H22年度に第1版、H30年3月に第2版が策定された。
茨城県と市町村が共同で策定したものであり、県として策定しているところは少ない。
キャリアラダーは、経験値に沿ってつけることができる。ジョブローテーションを考え
ることにも役立つ。キャリアアップのためにも使用できる。ぜひ活用してほしい。
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