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令和4年度水戸・土浦ブロック専門研究会【Zoom研修】

更新日:2023年03月29日

講師 筑波大学 根本 清貴 氏
講師 筑波大学 根本 清貴 氏
令和4年度 水戸・土浦ブロック専門研究会(Zoom研修)

<日時>
令和5年1月17日(火)13時30分~15時30分

<内容>
講演「周産期のメンタルヘルス」

講師 筑波大学 医学医療系精神医学 根本 清貴 氏

〇精神疾患の大きな分類 病因からアプローチする
1 外因性(身体因性)でないか(身体疾患によるものではないか)
2 内因性ではないか(統合失調症、双極性障害ではないか)
3 心因性、心理的な影響が大きいものではないか(パニック障害、強迫性障害、摂食障害等)
1から3の順に確認し、2及び3を主にアプローチしている。
・内因性疾患への対応の原則
内因性精神疾患の妊娠は、症状を増悪させるリスク及び治療の中断による病気の再発の可能性が高くなる(特に統合失調症・気分障害は周産期に調子を崩す可能性がある)ため、治療を継続する。また薬の多くは、妊娠や授乳が可能であるなどの正しい知識を共有することが大切。
・心因性疾患の対応の原則
「安全・安心・安眠」が原則。安全な場所で、安心できる環境でゆっくり休めるようにす
る。また、「不安」への対処が肝となる。薬を飲むことに対しての不安等抱えている場合
がある。定期的な面談で安心感を与えてあげることで対応できることも多い。

病因へのアプローチに加えて、インテリジェンス(知能)や発達障害の観点も重要。

〇薬の断薬
薬を飲んでいなくても、 2~3%の割合で、奇形は発生しており、村島は、「妊娠中の薬物使用=奇形」という先入観を取り払う必要があると強調している。また、薬剤が原因とされる奇形1%以下と研究されている。
先天奇形を起こしえる向精神薬として臨床現場で気にするべきは抗てんかん薬のバルプロ酸(様々な奇形と関連)と気分安定薬のリチウム(心奇形が増加)である。しかし、多数の薬を服薬している場合の危険性については定かではない。
抗うつ薬を服用し安定していた者が、薬物療法を中断すると約6割で再発の可能性がある。また、特に統合失調症・気分障害は、薬を中断すると、高い確率で調子を崩す可能性がある。母が調子を崩してしまうと生まれた後の児にも影響がある。

〇服薬中の授乳
授乳の指標として、相対的乳児投与量(RID)を使用することが多い。RIDが10%未満であればほぼ安全と考えられており、向精神薬のほとんどがRID<10%である。従来の添付文書は授乳を中止させることと記載されていたが、治療上の有益性及び母乳栄養を考慮し、授乳の継続又は中止を検討することと改訂された。また、「母乳とくすりハンドブック」を見ながら病院の外来で妊産婦と話し合ったり、詳しいことは「母乳と薬」外来で相談するように話している。

〇産後うつ
顔がこわばっている、ちょっと話すと「涙」がポロポロこぼれてくる、それでも、「やらなきゃいけないのでやります」と気張っている、家族に対して 「イライラ」する、ということが産後うつに気づくサインである。エジンバラ産後うつ病評価尺度でいうと、「はっきりとした理由もないのに不安になったり、心 配したりした」「はっきりとした理由もないのに恐怖襲われた」「不幸せな気分だったので泣いていた」が該当する。
産後うつは「迅速な対応」が必要である。切迫しているときは、1週間待つといった対応はしない。また、母の「赤ちゃんがかわいくない」という訴えは症状である。調子がよくなり、気持ちが落ち着いてくれば、かわいいと言えるようになる。産後うつは治療すればよくなるので、しっかりと治療することが大切。
 周産期はうつからの自殺が多い。妊娠中、産後ともに自殺事例のうち約4割がうつ病。特に妊娠初期と産後3~4か月での自殺が多く、注意すべき時期である。周産期の自殺企図の特徴としては「暴力的」なものである、縊首やとびおり等、既遂に至りやすい方法をとる事例が多い。

〇「要対協」
要保護児童対策地域協議会(要対協)とは、簡単に言うと、サポートが必要な子供や特定妊婦を支援するために、市町村保健センター、児童相談所、医療機関などが集まって相談することであり、重要である。多職種チームで連携すること、顔が見える連携が大切である。

〇質問項目
・受診勧奨のタイミングは
→うつ状態によりどのくらい生活が成り立たなくなっているかで判断。家族が見ていける関係性にあるかを確認し、家族からのアプローチも検討。また、EPDSの10項目に点数がついていた場合は、心配なので1度受診してみてはと促す。
・新生児訪問等で受診勧奨をしても繋がらないケースがある。受診勧奨のポイントと拒否があった際、どんなことに気をつけてフォローすべきか
→めげずに粘り強く受診を促していく。また、家族の協力体制を確認する。本当に辛い時に受診が必要だと思ったら、病院受診についてサポートするので、その時は教えて欲しいと本人へ伝えること。

・パニック障害治療中で、悪阻が加わりメンタル症状が悪化している。制吐剤を使用しても本人が効果を認めたくない様子や、辛さをアピールする演技をしている場面があり、行政・産科とも、対応に苦慮している。
→しんどいよね、大変だよね、少しでも状況が良くなると良いね、等共感する姿勢が大事。また、パニック障害治療中の精神科主治医へ相談し、精神科と産科が連携していくことも大切。
研修会の様子
研修会の様子

 

 

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