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令和4年度専門部会【Zoom研修】

更新日:2022年10月14日

講師 土井 幹雄 氏
講師 土井 幹雄 氏
事業報告 
 令和4年度 専門部会【Zoom研修】 
1 日時 令和4年9月13日(火) 13:30~15:00 

2 講演 『新型コロナウイルス感染症について』

3 講師 水戸市保健所 所長 土井 幹雄 氏

4 内容 
(1)開会・あいさつ 

(2)講演会
   演題:「新型コロナウイルス感染症について」
   講師:水戸市保健所 所長 土井 幹雄 氏

現在の新型コロナウイルス感染症対策は、保健所での全数把握が終了し、療養期間も短縮。
社会経済活動を円滑に進める方針となっている。しかし、基本的な感染対策は、今後もきちんとやっていかなければならない。そういう立場で、本日の話をしたい。

〇 保健所の役割
 ・地域保健法に基づいて活動
・2000年以降は、健康危機管理に取り組むよう、特に新興・再興感染症や自然災害、原因がわからない健康に悪影響を及ぼすものへの対応など、地方衛生研究所及び医療機関と連携して対応してきた。
 ・パンデミックへの準備は、どの保健所もできていなかったが、疫学調査、検査、療養支援
相談、医療機関との連携、ワクチン、市民への情報提供などの役割を果たしてきた。
・全数把握の目的は、未知のウイルスに対し、どのような性質ものかを知ることである。
・ウイルスは、常に性質が変わっていくため、その性質をその都度考えながら、感染対策を考えていかなければならない。

〇 パンデミックへの対応戦略
・封じ込め・感染抑制・被害抑制がある。
・日本では、封じ込めや感染抑制の間で様々な工夫をしてきた。
・感染者が増えるにしたがって、接触者調査だけでは感染者抑制には不十分であり、被害抑制(感染者が増えることは許容し、重症者への対応に注力)に対策が移ってきた。

〇 新型コロナウイルスの特徴
 ・自然界に宿主があり、自然界から人間界に入ってきたウイルスである。
・新型インフルエンザのように、将来的には、ウイルスとの共存、いわゆる風邪のウイルス
になってくるのではないかと考える。
・武漢株から、様々なかたちで変異して、現在のオミクロン株となった。
今まで、生き残りやすいウイルスが、生き残って勢力が増してきた。
・新型コロナウイルスとインフルエンザは、症状では区別がつかない。今後、同時流行した場合は、このことが問題となる。
・新型コロナウイルスは、変異していくごとに、病原性が弱くなっている。重症化のメカニズムが変わってきている。
・高齢の方で、生活習慣病がある方などいくつかの持病があると重症化する。
・治ってからも、頭痛や倦怠感、呼吸器症状などの後遺症があることが、一つの問題点となっている。
 ・子供が感染しやすい状況にある。20代から感染が広がり、職場を介して30代への感染、
その子供へ感染していく。学童や保育園などの集団発生が、社会的な影響が大きく問題となっている。
・変異ウイルスは、感染力の増強など、他のウイルスに比べて、生存に適したものが選択さ
れている。感染がひろがりやすく、重症化しやすく致死率が上がる。ワクチンが効かなく
なる。今後も、どのようなウイルスが出てきているのかをモニタリングしていくことが重
要である。
・株が変わるごとに、ウイルスの増える速さは変化してきている。
・従来の株に比べて、オミクロンは、ウイルスの増える速さが早い。
・ウイルスがあるかないかの検査では、生きているウイルスがいるかどうかはわからない。
 つまり、人に感染させるかどうかはわからない。
・人に感染をさせる期間は、培養分離陽性の期間であり、10日までである。10日までは、生きているウイルスがいる。
・抗原検査キット(定性)が陽性である期間は、生きているウイルスがいる可能性がある。
・感染した人の免疫が弱っていると、生きているウイルスが長くいる。
・個人個人の状況見ながら、この人にはどのくらいのウイルスがいて、どのくらい周りに感染させやすい状態なのかを見極めることも必要である。
・症状が少ない方、不顕性感染の方も、周りに感染させる可能性がある。
・多量のウイルスに暴露された場合は、症状が早くでる。オミクロンBA5の場合は、このような状況が続いている。

〇 新型コロナウイルスの検査について
 ・遺伝子検査(PCR)・抗原検査(定性・定量)は、今かかっているかどうかを調べる。
・抗体検査は、過去にかかったかどうかを調べる。
・リアルタイムPCRは、感度・特異度は極めて高い。ウイルス量も測ることができる。機械が必要で検査センターや大きな医療機関でできる。
・抗原検査の定性は、プラスかマイナスかを見る。簡便なやり方で早く診断ができる。感度は低いが、ある一定の量で、殆どが陽性となる。偽陽性・偽陰性がある。定量は、ウイルス量を測れるが、機械が必要で、大きな医療機関でないとできない。
 ・感染していても、抗原検査キット(定性)では、陽性と出ない領域があるため、症状のあ
る方は、1回の検査で陰性でも、もう1度検査をすることやPCR検査を実施することが
必要である。
 ・感染可能なウイルス量の目安は、定性検査キット(定性)で陽性になる目安とほぼ同じである。
 
〇 感染対策について
・発症の間隔は人によって違うため、先に発症したから感染したのが早いとは言えない。
・オミクロンBA5の場合は、感染者が早いスピードで増えていくため、疫学調査で、予測がつかない状態になっている。遡り調査が難しい状況である。
・医療機関や施設のクラスターなどは、丁寧に疫学調査をすることが必要である。
・小さい飛沫(マイクロ飛沫)が一定時間、空間にとどまることを考えると、エアロゾルの対策(換気・マスク)が重要である。
・充満したエアゾルを減らすため、空気を入れ替えることや換気扇のみならず、HEPAフィルターがある空気洗浄機を使用することも有効である。
・N95マスクをつけたほうが、感染リスクが減る。しかし、N95マスクをつけても感染している人もいるので、正しいつけ方が重要である。

〇 まとめ
・今後もウイルスの性質を見極めるモリタリングは必要である。
・医療として何ができるのかを分けて考える必要がある。今後は、医療の質を考える対応が求められている。
・リスクコミュニケーション
「いかに市民に理解してもらえるシステムをつくれるか」「地域の中で、どのような連携体制をつくることが今後のパンデミック対策に寄与するのか」を考えていくこと、地域の人材育成も重要である。
・変異が続く限り、感染症は続いていくが、最近のデータを見ると病原性や感染力は、弱く
なってきている傾向がみられる。

〇 今季(2022-2023年)のインフルエンザについて
・南半球のオーストラリアの状況としては、例年より流行が早く、新型コロナウイルスと同時流行があった。子供を中心に流行った。
・過去2年間、国内で流行がなかったため、集団免疫が低下。抗体保有率の調査では、Aソ連型・Aパンデミック型の抗体価が少ない状況である。
・そのような状況から、日本でも、小児を中心に、インフルエンザが流行る可能性がある。
・発熱の患者がいっきに押し寄せる可能性があり、このような情報提供を保健所しては、早め早めに行う必要がある。

(3)閉会 

 

 

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