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令和元年度第1回専門研究会(全体)

更新日:2019年06月24日

講師 青柳 玲子 氏
講師 青柳 玲子 氏
令和元年度 第1回専門研究会(全体)

令和元年5月27日(月)
茨城県市町村会館 13:00~15:00

演題:「これからの保健師活動に求められること」
講師:全国保健師長会 前会長 青柳玲子 氏(新潟県)

1.我が国の公衆衛生をめぐる変化
  【対象(人や集団、関連事象)の変化を整理してみる】
   ○地域保健の課題
   ・人口構造、疾病構造の変化、複合的状態像を有する住民の増加、地域格差、所得格差、孤立等のコミュニティの変化及び母子保健、介護等のグローバル化にともなう健康関連事象
   ○近年注目すべき危機管理面での課題
   ・結核等のグローバル化にともなう健康関連事象、感染症(新興・再興)及び薬剤耐性菌(AMR)蔓延の懸念、各自治体単位で取り組む大規模自然災害の多発、広域化、複合化
  【保健所機能~標準的対応から地域別対応へ~】
   ・地方分権にともなう変化-国と地方の役割が変わってきている
   ・専門的・技術的業務が求められている
   ・情報の収集、整理、活用
   ・調査研究の推進
   ・市町村支援
   ・企画・調整機能
   ・社会福祉等関連施策との連携
   ・地域における健康危機管理拠点
  【体制・組織】
   ・地方分権の推進による体制の大きな変化
   ・対象の変化に伴う組織の変化(医療職だったポストを事務職が担当するように)

2.地域保健をめぐる動向と保健師活動の課題
  【保健活動への社会的要請】
   ・健康寿命の延伸、生活習慣病等と死亡原因、少子超高齢社会、孤立死、コミュニティの希薄化脆弱化、所得格差・健康格差の拡大、災害時の公衆衛生、医療・介護給付費の適正化、社会保障制度の堅持などの健康課題は、多様な機関との有機的な連携なしに活動成果は得られないとしっかり認識すべき。(⇒組織横断的に取り組まなければならない)
  【保健活動への社会的要請に応えるために】
   ・主役は住民であることを忘れずに、①健康的な公共政策づくり、②健康を支援する環境づくり、③地区活動の強化、④個人技術の向上を通してQOLの向上を目指していく。
  【地域共生社会の実現】
   ・「我が事」「丸ごと」の地域づくりは保健師が昔から実践してきた事
   ○保健師に求められること
    ・役所内の他部署横断的な取組み、企業との連携
    ・地域住民、住民組織、関係機関との協働(保健師は見える黒子として)
    ・地域づくりに「健康課題」を提案、助言
  【地域包括ケアシステムを構築するために】
   ・健康な高齢者も、病を抱える住民も、障害とともに生きる障害者も、認知症も、精神障害者も、難病も、医療依存度の高い子どもも、住み慣れた地域で、当たり前に、自分らしく暮らし続けることができるまちづくり
   ○そこで大事なのが「支え合える関係」
    ・相互補完的にゆるくつながる地域づくり
    ・世代を超えてわがまちのつながりに関心を持つ
    ・異世代との接点を作り出す

3.今後の保健師活動の方向性
  【「地域における保健師の保健活動に関する指針」】
   ・茨城県でも活動指針を策定していて、市町村と県が連携したのはすばらしいと思う。これがゴールではなく、自分の活動につなげて欲しい。
   ○目指す基本方針
   ・地域特性に応じた健康なまちづくりの推進―ソーシャルキャピタルの醸成
   ・地域のケアシステムの構築―自助・互助・共助
   ○活動手法・活動体制
   ・個別課題から地域課題への視点及び活動の展開
   ・予防的介入の重視
   ・地区活動に立脚した活動の強化
   ・地区担当制の推進
   ○行政組織運営の基本方向
   ・各種保健医療福祉計画の策定及び実施
   ・地域診断に基づくPDCAサイクルの実施
   ・部署横断的保健師活動の連携及び協働
   ・人材育成
   ○活動領域に応じた保健活動の推進
   ・都道府県、保健所設置市、特別区及び市町村の本庁-技術的・専門的な指導・支援
   ・都道府県保健所等と市町村間-重層的な連携体制と技術的な助言・支援・連絡調整
   ○今後の保健師の活動の方向性(「地域における保健師の保健活動に関する検討会」報告書より)
   ・地域を「みる」「つなぐ」「動かす」、予防的介入の重視、地域活動に立脚した活動の展開
   ・検討会の副会長として参加。保健師活動のコアな部分を明文化・整理できた。

4.都道府県・保健所設置市及び特別区・市町村別にみた強化すべき保健活動
  【市町村における強化すべき保健師活動】
   ○保健師の活動分野の拡大により、組織横断的な取組みの推進及び統括保健師の配置と機能強化
   ・施策、事業にかかる技術的及び専門的側面からの、横断的な調整による組織全体における保健師の活動の推進は統括保健師の配置によって実現出来得る。
   ○都道府県からの権限委譲や制度改革により、事業の実施主体として責務が拡大
   ・あらゆる業務が市町村におりてきて責任は重大
   ・施策・サービス等を企画、立案、提供、評価
   ・効果的に事業や活動を展開できる仕組みを構築(量的・質的データを活用した地区診断、委託事業の質の管理)
   ・地域包括ケアシステムの推進(ソーシャルキャピタルの醸成・社会資源の開発)
   ・人材育成体制の構築
   ・災害時等健康危機管理体制の整備
  【保健所設置市及び特別区における強化すべき保健師活動】
   ○基礎的役割を果たす自治体としての機能と保健所としての機能の双方が求められる
   ・住民同士の交流やまちづくりの推進
   ・地域包括ケアシステムの構築(社会資源が豊富なのですすめやすい)
   ○市町村合併などで、新たに中核市となった市では、本庁・保健所・保健センターの役割や機能が不明確になりやすい
   ・本庁・保健所・区役所・保健センターのそれぞれの役割と機能の整理と明確化
   ・災害時、感染症等健康危機管理体制の整備
   ・高い専門性と対人サービスの効率化(保健所機能の明確化と強化、高い専門能力と技術の確保)
   ・県との連携強化(医療計画や健康危機管理などで必須)
  【都道府県・保健所における強化すべき保健師活動】
   ○職員数の減少、世代交代による新任保健師の増加、中堅保健師層の希薄等による年齢階層保健師の偏在が課題となっている都道府県が多くなっている
   ・人材育成体制の強化(市町村からの協力、市町村との協働が欠かせない)
   ・人材育成の手段・手法の開発が急務
   ○管内の広域的な各種情報を分析し、地域の健康課題を明確化し、解決に向けた活動を市町村とともに推進する
   ・広域的・専門的・持続可能な活動と市町村との協働を積極的に行う
   ・管内の独自施策に積極的に取り組む
   ・ソーシャルキャピタルの醸成や地域包括ケアシステムの構築
   ・人材育成拠点としての機能強化
   ○これまで「市町村支援」であったがこれからは出向いて一緒に活動する「協働」がキーワード
   ・保健師だけでは解決できない市町村組織内の縦割りや市町村間のつなぎとサポート
   ・健康危機管理のための体制づくり
   ・先駆的な保健活動の実施・普及
   ・情報の収集・分析・発信
   ・調査研究の実施
   ・市町村の取組み格差の縮小にむけた技術的助言、事業企画提案と協働実施

5.保健師として強化すべき能力
  【保健師の活動指針を踏まえ保健師として強化すべき能力】
   ○「活動指針」だけで市町村が取り組むのは難しいので、何を強化すべきかを整理
   ・課題に対する問題探求力
   ・取組みの俯瞰力
   ・組織的な運営・推進力
   ・取組みを評価し、評価結果を改善につなげる力
   ・実践知の集積から形式知への転換力
   ・情報発信力
   ○青柳先生自身の保健師活動を振り返って
   ・地域に責任を持つ保健師活動の展開が必要
     「地域」「組織」をみる
      -将来を予見
      -潜在する課題を見出す
      -視点、知識、技術を熟達化させる
     「地域」「組織」をつなぐ
      -「公的機関」であることを最大限利用
      -多職種連携・協働を活性化
     「地域」「組織」を動かす
      -自助・互助・共助を促す
      -キーパーソンと目標を共有
      -無関心層にも手が届くポピュレーションアプローチ
   ・PDCAサイクルに基づいた活動
     実感と体感-保健師が地域や人々の暮らしを直感と五感を働かせ見て感じ、それを実践に生かす(現場主義)
     住民の生活は数値だけでは見えない ⇒ 見える化は分析と統合がポイント
     個人の意識と行動変容に頼る健康づくり対策では健康格差は縮まらない
       ⇒健康を支え、守るための社会環境整備の取組みの強化が必要
       例)イギリスは国策として食パン等の塩分含有量を減らし、国民の塩分摂取量を減らすことに成功
     ソーシャルキャピタルを活用したまちづくりの結果としての健康増進へ
   ・プロフェッショナルとしてのスキルアップ
      困難事例に寄り添い、向き合える保健師であること(特に市町村には求められる)
      地域に愛着を持ち、熟知したうえで高い専門能力を柔軟に発揮
      保健師の実践知を集積して活用できる知識として継承していく
       ⇒保健師活動で獲得した実践知を、次の世代に継承することは公衆衛生の発展に寄与することになる(実践知の言語化―熟達を世代から世代へ)

6.全国保健師長会の取組みから
【2019年度活動方針】
   未来を創造する公衆衛生看護活動の展開
―みる・つなぐ・動かす~保健師の原点から住民とともに創る未来―
【最重点活動目標】
  ○保健師活動の可視化及び質の向上
  ○情報発信の強化
  ○災害保健活動の推進
  ○市町村の会員拡大
  【災害対策の取組み】
  ○災害時の保健活動の活動推進に関する調査研究及び災害時マニュアルの作成
  ○東日本大震災以前は、避難所への常駐や巡回など、住民への直接支援が求められていた
  ○東日本大震災以後は、保健医療活動チームとの協働や受援マネジメントなど調整役割の重要性が増大
  ○明らかになった課題
   ・市町村において準備状況が遅れている
   ・組織体制が十分検討されていない
   ・市町村と保健所の役割分担・協働体制が不十分
   ・受援準備が不十分
   ・災害訓練や研修の受講率が低い
  【地域に責任を持つ保健師活動を推進】
  ○地区担当制、業務担当制、いずれも保健師に地域に責任を持つ視点や意識がなければ効果的な活動にはつながらない
  ○地域に責任を持つ活動とは、地域に向き合う気持ちが大事
  ○保健師が住民の複雑な健康課題に向き合い、より公共性の高い役割を担うためには、地域住民との個別の関係の中から健康問題を解決していくアプローチを強化していく必要がある。

7.おわりに
  【改めて、保健師として心がけたいこと】
  ○激動する国の政策に振り回されない
  ○地域、生活者起点の保健活動
  ・課題も答えも現場にある
  ・変革の時をチャンスととらえる
  【これからの保健師活動】
  ○潜在的な課題を拾い上げ、社会へ働きかける活動は、地域に拠点を築き、住民や地域の痛み、社会の変化に敏感に共鳴できる力が備わってこそ実現できる。
  【保健師のリーダーに期待したい】
  ○社会や地域、実践現場は常に変化していることを直視し、逃げずに地域で活動することの強み
  ○公的機関の専門職として地域に責任を持つことの自覚を後輩に気付かせ、保健師として背中を押せるリーダーであり続ける事
  ○後輩の成長を見守るためには入れ目のない支援が必要⇒そのためにも自分を磨き続ける!
講演会の様子
講演会の様子

関連書類

 

 

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