茨城県市町村保健市連絡協議会 事業報告 tag:https://www.iba-hokenshi.jp/ 茨城県市町村保健市連絡協議会 事業報告 2025-02-12 令和6年度第1回専門研究会(全体) tag:https://www.iba-hokenshi.jp/, 2025-02-12:192 2025-02-12 演題 「これからの母子保健に期待されること」 講師 公益社団法人母子保健推進会議     会長 佐藤 拓代 氏 日時 令和6年5月27日 13時~15時 会場 茨城県市町村会館 講堂 ・子育て支援機関拠点等は全国に8000ヶ所ぐらいあり,母子保健をやっている市区町村は1741市区町村。保健師たちが忙しすぎて伴走型支援でこれ以上負担をかけられない,公的機関にいる職員だけでは妊娠期から子育ての支援は間に合わないというのが,こども家庭庁のこども家庭センター設立の根底にあり,委託等によるNPO等の機関が参入していきている。市区町村における母子保健が事業をこなすだけの関わりで良いのかというのが大きなテーマにもなってくる。 ・一番必要なのは,背景に何を抱えていようが何でも相談できるような人。いろんな人が関わるよりは、決まった人が関わり、この人であれば、妊娠届を出したときにも話を聞いてもらったし,何かあったときにまた相談できるぞっていう信頼関係を構築していくこと。 ・母子保健業務はポピュレーションアプローチ。地域で生まれ育ったこどもたちが持ってる能力を生かすような支援が必要であり、虐待を発見することだけが役割ではない。 ・妊娠届出時にじっくりと話を聞き,相談をしたいと思わせることが重要。今までの人生(親から受容された育ちか,対人関係の問題はないか,社会的スキルのレベルはどうか,困難に対応できるか,SOSを出せて他人に頼れるか等)が大きな問題となる。人に頼る力がある人たちは、弱い自分をさらけ出せる人間。パートナーとの出会い(どのような人間に惹かれるか・出会ったいきさつ・関係性)等も聞けるとアセスメントが充実してくる。 ・妊娠から出産の経過の中で支援を要する場合は,産科との連携が重要になってくる。助産師・看護師が心配だと思うようなエピソードが何かあったか聞き出すことも大切。地域での子育てを支援につなげていくことができる。保健師はおせっかいばかり言うと児童福祉の方によく言われるが,事態を動かそうとする保健師たちの素晴らしい機能。 ・その時々でアセスメントをするのは困難であり,アセスメントも万能ではない。何かあったら相談してきてと本人の相談を待っていては事態が悪化してからになってしまう場合がある。事態が悪化してしまってからでは,児童福祉と一緒に虐待予防の支援はできるかもしれないが、子育ての支援は難しくなる。 ・母子保健事業は定期的に母子の様子を把握することができる貴重な機会であり,健診を受診してもらえるよう,ホームページや広報・通知等を通して,どんな親にもわかりやすい情報の発信が必要。母子保健法の第3条をみると乳児及び幼児が対象。特に今回のこども家庭センターの切れ目ない支援は特に3歳までが一番支援の効果が出てくる時期となってくるため,そういう覚悟を持って支援して欲しい。 ・保健師と対象者家族との間の信頼は,アセスメント指向でなく話しあう姿勢が大切。指導すると上下関係が生じるので指導はしない。 ・指摘することを見つけ出す出会いではなくてまずは受容。問診票のチェックができなくても落ち込ませない、「お母さん,お子さんはどうなのかな」と聞き出すような母子保健の役割を今こそすべき。支援の隙間に落とさない。嘘をつかなくてもいい信頼関係の構築をしていくことが出会いの場面においては重要。 ・妊娠届出時に「妊娠おめでとうございます。(相手の気持ち)」は禁句。妊娠がうれしいと思う思い込み。「妊娠届出に来てくれてありがとうございます(こちら側の気持ち)」が正しい。おめでとうという価値観を入れた言葉かけはしない。 ・支援プランについて,支援プランの提示は,次の出会いを告げるもの,次に何をしてくれるのかを示すことが相手の受け入れ状況にもつながっていく。 ・フィンランドのネウボラでは, 6歳までおんなじ保健師が支援する。親よりも先に相談に行くというような関係性を構築していおり,児童福祉との連携もいち早く取り組んでいる。 ・保健師と対象者家族との間の信頼は,アセスメント指向でなく話しあう姿勢が大切。指導すると上下関係が生じるので指導はしない。 ・虐待予防は親ばかりに支援していくのではなく、こどもの味方になりこどもを見ることが大切。様々なスケールがあるので、正しく評価し、それを関係機関に伝えて欲しい。特に,発育曲線のプロットは重要。医学的な理由がなければ養育の問題かもしれないと考え、関係機関に共有しておくとよい。 ・親をほめる言葉として,総論とした「頑張ってるね」はダメ。褒めるところないからよく頑張ってるねだけ言ってるんだというように思われることがある。各論で具体的に褒めていくことが大切。また,こどものためにではなく,お母さんのためにこういうことをやめたほうがいいよと伝える方が受け入れてもらえやすい場合がある。こどものためではなく,あなたのためということが大切。 ・母の成育歴等を聞く場合,お母さんはどんな子供だった?という切り口も有効。また,将来の親子関係を考えてもらうとき,こどもにどんな親だったといってもらいたい?等もよい。 ・個室での面談は,対面は避ける。子供が遊べるような教室での面談では、おもちゃを置いておいて子供に関心があるかどうか,何をやったらいけない言うか、どんな怒鳴り声で怒っているか、褒めて延ばすような関わりを子供にしているかどうか等の状況の把握できる。 ・家庭訪問後の職場内でのケース共有は大変重要な機会。周囲に自身のケースを知ってもらい,支援内容に幅がでる,一人で支援している・一人で抱え込むということがなくなる。 ・虐待のハイリスクの把握は難しい。虐待の場合のハイリスクアプローチは、今までの生育歴やこどもの受容等。子育て世代包括支援センターはハイリスクアプローチというよりはポピュレーションアプローチで子育て支援サービスと一緒になって、この子育ての負担を軽減するようなアプローチに向かって行く役割。これはこども家庭センターになっても変わらない役割。 ・母子保健と児童福祉は、リスクの重きをどこに置いてるかが違う。母子保健は能動的。児童福祉は受動的。母子保健は、虐待まで至りそうかどうかを判断し,予防の支援を行うということが非常に重要。児童福祉は介入であり,悪化の防止のため現時点の状態が重要だが,母子保健では,現時点の状況をどのように受け止め、どのようにしようと思っているかが重要。 ・サポートプランの対象・評価は,子育て世代包括支援センターの支援プラン対象者と同様。 基本項目としては,①心身の状況等に照らし包括的な支援を必要とすると認められるよう支援児童等その他の者の意向②要支援児童等その他の者の解決すべき課題③要支援児童等その他の者に対する支援の種類及び内容④①②③に掲げるもののほかに市町村が必要と認める事項。本人がこういうサポートが必要であるという意向,どんな課題があるか,どんな支援をしていくか。 ・一体的サポートプランでは,母子保健と児童福祉が一緒になってケース合同会議を開いて、ご本人もできたら入ってもらって作るサポートプラン。ご本人が希望するところが何もありませんって言ったらもう行き詰まる。児童福祉機能と母子保健機能の連携協力のうえ,リスクセスメント(国立成育医療センター作成)等を使用し,統括支援員と相談の上、行動ケース会議等と開催していく。 ・サポートプランの目的・目標は一緒に解決したいこと。妊娠届出時の全数面接等を通し,担当が気になるところ、ご本人の心配事等を踏まえ,一緒に解決を目指したいことというのが良い。出産、子育てを一緒に応援していきますっていう私たちの思いを書くのがすごく受けとめてもらええた。 ・妊娠・出産・子育ては誰に頼れば良いかわからない。あたりまえに分娩することがすべてではない。出産費用負担がゼロになったら,産後ケア事業を受けたい人が受けることができたら,身近なところで利用できる子育て支援があって,ほめてくれるような支援があって生活ができれば子育ての負担も軽減する。目指すのは地域の実家化。パートナーと2人で子育てをするのではなく、関わる支援者が周囲の調整をするという覚悟をもって妊娠出産から関わっていけたら良い。 ≪質疑≫ 石岡市: 今年度から今度こども家庭センターを立ち上げ,母子保健と児童福祉一体化して、保健センターの中に開設。支援のヘルパー等のサービスを作っていく・育てていくためには、どのようなところに力を借りればよいか。 ➠高齢者のサービスはあるが,こどもを対象としたサービスはなかなかないのが現状。医療的ケアを受けるこどもさんたちに対する医療の訪問看護も,高齢者を対象にしている事業所が担っている状況はある。 母子保健の育児支援として希望する内容でアンケートをとったことがあった。まずはどんな内容か,中身を知ってもらい,聞いてみたいと思っている人たちを集めて研修をして、サービスへ進めていったというところがあった。相手方から「何かありますか」と言ってくるのを待っていては新しいサービスを始めるのは苦しいかもしれない。 ありがとうございます。 常陸大宮市: 合同ケース会議に対象者の方も含めた方が良いという話だったかと思うが,それは妊娠届出時の面談の後に、その母子保健担当と児童福祉の担当と対象者が口頭でお話をする機会を作っていくという認識でよろしいか。 ➠最初が肝心。当事者が入らない形でサポートプランを作ったとしても,誰が本人に渡しに行くか等の問題がでてくる。できれば,ご本人もいる場で、あなたもやって欲しいなと思うようなことをおっしゃってくれたらいいからちょっと30分だけでも時間いただけませんかという形での3者合同面談が出来ると良い。合同ケース会議に至る前の信頼関係づくりが今まで以上に重要になってくる 令和6年度市町村保健師研修会【Zoom研修】 tag:https://www.iba-hokenshi.jp/, 2025-01-17:191 2025-01-17 令和6年度市町村保健師研修会【ZOOM研修】事業報告 日時:令和7年1月15日(水)13時30分~14時30分 演題:「公衆衛生学会での、事例発表について」 講師:常総市福祉部保健推進課 課長補佐 染谷早苗氏 【作成の背景】 平成27年9月豪雨において鬼怒川堤防が決壊し、市の3分の1となる鬼怒川東地区が浸水した。浸水した地区には多くの公共施設があり、各種物品等が使えない状況のなか災害支援を実施せざるを得なくなった。 発災初期における課題として対策本部と保健師及び避難所で情報共有できなかったことと、保健師活動として何を行うべきかわからなかったことがあげられている。この課題への対策として発災直後(フェーズ0)に焦点をあて、どの保健師が参集しても初動活動を円滑に行えるようにすることを目的にアクションカードを作成している。 【作成方法】 保健師による定例会および管理栄養士による定例会の場などを活用し、若手を含む専門職が皆で作成した。作成を進めるにあたり、事務職の視点が必要になったため事務職員を検討の場に加えていった。 【作成時に気を付けたこと】 活動内容を明確にし、簡潔にすること ◆活動内容ごとにアクションカードを作成する ①支持グループ ②情報収集グループ ③記録グループ ④避難所グループ ◆誰がどの担当になっても実施する事がわかりやすいようにする ◆実施したこと、未実施のものを明確にし、漏れが無いようにする  →チェックできるように ◆若手保健師でも見てわかるようにする 【作成した結果(アンケートより)】 アクションカードを用いた災害シミュレーションへ参加した保健師、管理栄養士の半分以上は「災害経験なし」であったが、訓練によって80%以上の参加者がアクションカードに従い災害活動ができると回答した。一方、シミュレーションを実施しなかった期間が長くなると、アクションカードを用いても災害活動が困難になった。平時における定期的なシミュレーション等訓練が必要である。 【アクションカード内容】 ①指示グループ ※本部と各グループを連携する役割 ◆各保健師等からの報告で、出勤までに要する時間を考慮し今後の配置計画をたてる(災害対策本部や統括保健師と一緒に) ◆職員の出勤状況確認。上司へ報告 ◆本部からの指示を各グループへ伝達  ・記録グループに記録することを指示  ・情報収集が必要な場合は、情報収集グループへ指示  ・避難所グループへ指示(ロゴチャット) ◆避難所グループからの依頼について  ・本部に確認  ・情報収集グループと検討し指示  ・情報収集グループの報告をうけ、記録グループへ記録の指示  ・避難所グループへ指示 ◆保健計画立案 ◆関係機関との連携・調整 ◆受援体制の構築 ◆オリエンテーションの計画(場所、時間、内容) ◆通常業務の検討 ◆カンファレンスの計画・実施 ②情報収集グループ ◆支持グループの指示のもと、情報収集する  収集した情報を、指示グループに報告  指示グループの指示のもと、収集した情報をロゴチャットで各グループへ周知 ◆保健師避難所グループからの依頼  指示グループと共有検討し情報収集・依頼対応  対応した内容を指示グループへ報告  避難所グループへロゴチャットで報告 ◆記録グループへ情報記載依頼 ◆庁内関係部署との連絡・調整・報告(その都度指示グループに報告) ③記録グループ ◆指示グループや情報収集グループの指示のもと、ホワイトボードに記載する ◆ロゴチャットをみながら、各情報をホワイトボードに記載する ◆依頼・報告・処理済みなどわかりやすく記載する ◆一日ごとに電子化する ◆復旧時期は記録をまとめる ◆広報活動(ホームページ、LINE、母子モ、チャット)  事業中止等の連絡 ④避難所グループ(①いのちを守る、②二次災害防止) ◆指示のあった避難所を巡回する(巡回経路の計画) ◆避難所の健康に関する課題を明確化する →報告・相談 ◆福祉避難所が被災当初から開設の場合は、そこに常駐する  ただし、フェーズ2になった時点で8時間交代とする  また、派遣看護師を依頼し福祉避難所に常駐してもらう ◆避難所で対応困難となり自己判断できないときは、指示グループに連絡し指示をもらう ◆DMAT等巡回時に診察をうける優先順位の対象者を受付係に伝える 【取手市情報】 取手市は災害時のどの状況でも誰でも災害活動がとれるよう災害時アクションカードを作成している。 初動時、参集時、避難所立ち上げ時のほか平時の活動について作成している. 【Q&A】 Q アクションカードはどのようなものか A 災害時に行うことを箇条書きにしたカード Q 受援体制など準備しておいたほうが良いものは?受け入れ時の注意点 A 常総市は準備が十分ではなかった。 災害時保健活動マニュアル等を渡されたが、発災直後に読みこむことは困難であり、平時に理解しておくべきものであったと思う。 保健師数や活動内容をふまえ、支援者に何をしてもらいたいか考えておくことが大切だと思う。 支援に入る保健師は「なにやりましょうか?」と聞くのではなく、自発的にやるべきことを提案してもらえるとありがたい。発災後10日間程度は自主的に活動できる保健師が望ましい。避難所運営を率先して行った自治体や、事務用品持参で支援に入り記録を整理して帰った自治体はありがたかった。 受け入れ時の注意点は、最新の情報を提供することの大切さだと思う。 自分の持ち物であってよかったもの→体拭きシート、洗口液、生理用ナプキン        あればよかったもの→モバイルバッテリー、めがね   Q 保健師の役割は A 災害後の72時間は①いのちを守る②二次災害に防止に努めるため  保健師は課の枠をこえて、避難所の市民の救護介助等にあたることとなっている。 Q 災害時の参集方法 A 本部の(部長・課長)と調整検討し、庁内のビジネスチャットツール(ロゴチャット)で指示し参集する。(参集場所等) Q アクションカードは保健活動マニュアルとどのように連動しているのか A 保健活動マニュアルとは連動できていない 常総市では要配慮者・支援者については電子連絡帳に入力されており、タブレットを用いて情報利用が可能となっている。 要配慮者・支援者等への安否確認は一般事務職員が実施している。保健師は生命に関わる分野での活動として避難所対応をする。要配慮者・支援者が避難所に来ていると判明した場合は避難所において必要な支援を実施する。 【他市町村でのアクションカード作成に向けて】 アクションカード自体はすぐ作れるが、実用レベルに至ることは簡単でない。 先輩保健師が頑張って作りがちだが、若い保健師も作成することでカードへの愛着も沸く。作ったばかりが理解度も高いため作っただけではなく定期的なシミュレーションを続けて使える状態を維持してほしい。 令和6年度水戸・日立ブロック合同専門研究会【Zoom研修】 tag:https://www.iba-hokenshi.jp/, 2024-12-13:190 2024-12-13 令和6年度水戸・日立ブロック合同専門研究会【Zoom研修】研修報告書 1 日時 令和6年11月25日(月) 14時~16時 2 内容    演題:「保健師記録の基本的な考え方と書き方について」    講師:公衆衛生看護記録研究会       代表 柳澤 尚代 氏 ---------------------------------------- 【この研修会が目指したいこと】  (1)内部研修の実現     職場で、継続的に知識の更新、学びなおし及びスキル開発のための事例検討をどのように実現していくのかをイメージできる。  (2)システム化  職場で、継続的に記録改善が可能な仕組みを考える。 【Ⅰ.保健師が書く記録の実態と課題を共有する。】  事前アンケートから見えてきた課題  ・職場で、困りごと・悩み等を話し合い、課題を保健師全員で共有できていない可能性がある。  ・職場毎に、記録担当者を決めたり、記録様式の選択、マニュアルや略語事例集などのルールの作成は未整備な可能性がある。  ・職場の事例検討会で、アセスメントをブラッシュアップするなど、継続した学び直しの場が不足している可能性がある。  ・記録への認識や関心を高めたり、上司および同僚からの指導および指摘を受けるなどの学び合う環境が不足している可能性がある。  記録のあるべき姿  ・関係者間の情報共有のしくみが整備されている記録  ・支援課程の的確な記述がある、実践の思考過程が見える記録   記録に関する問題の全体像(看護記録の開示に関するガイドラインより)  ・問題解決思考が身についていない  ・看護過程を用いることができない    ⇒これらの背景があり看護記録が書けない  ・看護の専門領域の役割・機能が不明確 【Ⅱ.記録作成のための基礎的知識を共有する。】  保健師記録の法的根拠  ・感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律  第53条の12 結核登録票  ・母子保健法  母子保健相談指導事業の実施について対象ごとに相談・訓練の内容を記録し、整理  ・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律  対象ごとにケース記録を残し、継続的な相談指導業務で使用する  保健師記録の要件  定義1 保健師活動における実践の思考と行為の一連の過程を示すもの  定義2 所属組織における公的文書として位置づく記録  看護記録の目的とは   記録とは、ある目的のために関連した情報を文字で伝達するコミュニケーション手段。保健医療チームでは1人の対象に複数の人間がかかわるため、情報を正しく共有することが必要である。  目的1   保健活動を保健師および他職種と推進するための情報交換ツールである  目的2   保健サービスの質を保証するための資料となる   支援内容の妥当性、最適正・最善性は維持されたか、公正性は保持できたか、効率性  目的3   保健師記録は保健師活動の評価、実践活動の成果を蓄積する資料となる   保健師教育、研究の資料となる  目的4   保健行政サービスの適正実施を説明する公的文書   保健行政としての説明責任、情報提供者としての責務   公的機関としての法的根拠・公平性に基づいたサービス提供など、これからの経緯や要件の適正さを証明する。  記録様式  ・看護記録とは看護実践の一連の思考と行為のプロセスを記録したものの総称であり、記録は保健師の支援課程を可視化するものである。  ・記録は、看護実践の証を残すと同時に関係者間の情報共有上最も重要な手段となる。  保健師記録の要件  (1)文書規定 各自治体で定めている文書規定=公文書としての取り扱いになっているか   開示方法、記録の定義・目的・種類・内容・保管管理  (2)種類・技法・記述法   ・記録様式    経時的、PONR、フォーカス・チャーティング、POS、SOAP、フローシート、クリニカルパスなど   ・記録のマッピング技法 ジェノグラム、エコマップ   ・記録の記述法 叙述体、要約体、説明体  (3)記録管理   ・作成 ガイドラインの整備、研修会、事例検討会   ・管理 供覧システム、共有のキャビネット、管理方法、責任者など   ・廃棄 文書規定、保存年限(虐待案件など保存期限が長期間保存になってきている) 【Ⅲ.看護実践のプロセスを思考過程として示す能力とは何かを理解する。】 看護過程とは、“看護とは”の目的意識をもった実践のプロセスであり、基本的には患者と看護職の関わり・相互作用という原点を内包しつつ、患者の持つ健康問題を解決に導く道筋であり、方法論としての問題解決法である。 情報収集→分析的なアセスメント→全体像の描写→看護目標・看護上の問題の抽出・期待される結果・ケアプラン→実践→評価→情報収集 とサイクルをまわす Plan:データ収集、アセスメント、問題の明確化、計画立案  入ってくる情報に基づいてどんなことを確認、把握するか Do :実施 支援の実施 See :評価、再アセスメント 当事者や家族の反応、保健師活動の振り返り・評価 記録様式の記載時の注意点 ・記録に残さなくてもいい情報もあるため取捨選択する ・目的と収集した情報が合っているか  ・助言した内容に対する当事者及び家族の言動を反応として具体的に記載する  ・不足情報も書いておく  ・「上手そう」といった主観的で曖昧な表現ではなく、支援・指導・助言の必要性を念頭に置いた表現にする  アセスメントとは   クライエントの健康問題を明らかにするために、クライエントや他の情報源から健康状態に関する主観的・客観的データを収集し、保健師の視点からその情報を分析・解釈すること。  保健師が書き残すアセスメントの要素  ・生活状況での問題の記述  ・支援・指導・助言の必要性を念頭に置いた保健師がとらえる問題構造の記述  ・支援の緊急度、優先度、支援の時期やサポート体制整備の必要性、今後の計画の記述 【Ⅳ.表現能力を高めるポイントを理解する。】 事実とは:根拠をあげて裏付けできるもの ・直接経験の事実 自分が直接見たり聞いたりして知った事実 ・伝達の事実 他人の口や筆を通して知った事実 意見とは:何事かについて、ある人が下す判断である。他の人は、その判断に同意するかもしれないし、同意しないかもしれない 記録で注意深く行うこと ・病状や診断、治療など医師の領域に踏み込んだ書き方をするとき  (例 認知症と診断を受けていないのに認知症とは書かない) ・利用者の態度や性格などについて否定的な内容の記述をするとき ・その他の利用者との信頼関係を損なう恐れのある事項を記載するとき 【Ⅴ.情報開示をめぐる諸問題を理解する。】  情報開示の歴史的経緯 1995年 インフォームド・コンセントのあり方に関する検討会  1997年 医療法の改正  1999年 情報公開法制定  2003年 個人情報保護法  個人情報とは   「個人情報」とは、生存する個人(最近は亡くなられた方も取り扱う)に関する情報であって、氏名、生年月日などにより、個人が誰であるかを識別することができる情報を言う。(メモであっても識別できるものは該当する)個人の身体、財産などの属性に関する情報も、氏名などと一体となっていれば、「個人情報」にあたる。  個人情報保護法第23条第1項   個人情報取扱事業者は、個人データを第三者に提供する場合、原則としてあらかじめ本人の同意を得なければならない。  情報の扱い方の具体例  ・「あなただけに話す、他の人には言わないでください」と言われても、必要な情報とは何かを判断して記載する。なぜ言わないで欲しいのかの理由を確認することが重要。  ・同一家族内で夫に知られたくない妻からの相談の場合、知られたくない理由は何かについての記載が必要。夫から妻の相談記録の開示請求があった場合、家族であっても第三者に相当する。  ・虐待事例の場合、子ども自身が話した情報は親と子ども利益は必ずしも一致しないので、非開示相当。  ・正式ルート外で他課から得た情報を記録に残す場合は、残す根拠、支援に必要な情報である等の理由を明記。  ・虐待事例のため本人同意は不要の場合、何故本人同意が不要かの保健師の判断を記載。 【Ⅵ.演習~活動の質向上に向けた記録の書き方】  事例資料をもとに演習  ・今回の訪問目的 水戸市より考えた内容を発表  ・アセスメントしたこと 日立市より考えた内容を発表 【質疑応答】  ・水戸市より「介護保険分野での高齢者対応の記録には目標があるが、保健師記録には目標の設定がないのは理由があるのか?」  →対象者は1人1人実態が違うため、実態を把握して分析していくのが保健師記録。そのため目標ではなく、目的からの記載となっている。  ・かすみがうら市より「あなただけに話すけど他の人には言わないでねと実際言われたことがあり、どこまでを供覧するのか判断が難しい。どう対応したらいいか?」  →なぜ秘密にしたいのか理由を本人に聞く。秘密にしたい内容に重要な情報が多々ある。仕事が継続していくためには、行政の一部署で働いているという観点から考えると、秘密にする内容は何もない。 令和6年度専門部会【Zoom研修】 tag:https://www.iba-hokenshi.jp/, 2024-10-11:187 2024-10-11 令和6年度専門部会【Zoom研修】議事録 令和6年10月1日(火) 演題:「5歳児健診の実施に向けて~保健師の業務を中心に」 講師:鳥取県立総合療育センター 院長代理 小枝達也先生 1.そもそも5歳児とは  ・「身体発育、運動発達、言語発達、認知発達、社会性、遊び」について  ・認知の部分では「じゃんけんの勝ち負けが分かる」「しりとりができる」「5つまで 数えられる」が確認ポイントとして大きい。社会性の部分で「布置の力=見通しの力」が育つ時期であり、布置の力が身につくと「切り替え」ができるようになる。 2.5歳児健診の意義  ・ちょっと気になる子であっても、早すぎる診断はハズレる。その時にならないと見えてこない課題がある。3歳児健診では気づかれなかった子、5歳児健診で事後フォローとなったの95%は通常学級に入学する現状がある。5歳児健診で気づき、気づきを深め、指導の場に乗り、入学することが望ましい。大分県竹田市では、5歳児健診を実施し、小学生の不登校が減少した実績がある。 3.5歳児健診の体制 4.5歳児健診の流れ  ・国が補助単価を5,000円(集団健診)に増額している。  ・5歳児マニュアルに健診の流れや、健診方式について記載あり。  ・使用する健診問診票はDrが所見をとることができるような内容になっている。  ・所見があった児は、子育て相談等につなぎ「気づきを深める」ことが大事。  ・すこやか子育てガイド(ピンク)に5歳児健診を実施して、エビデンスをとって いるものの内容が書いてある。保健師はよく読んだ方が良い。  ・発育曲線は平成12年度の成長曲線を使う。(この根拠については、小枝先生に質問 をしたが、即答できないとのことであった。) 5.フォローアップ体制について  ・「様子をみましょう」はない。  ・判断には目安を設けているので、判断に迷うことはない。  ・心配が出てきたら相談する相談先を具体的に情報提供する。 6.その他  ・小枝先生の著書や無料で使用できる音読指導アプリの紹介があった。 令和6年度土浦・筑西ブロック合同専門研究会 tag:https://www.iba-hokenshi.jp/, 2024-09-18:186 2024-09-18 R6土浦・筑西ブロック合同専門研究会 研修報告書 1.日時   令和6年9月6日(金)14:00~16:00 2.会場   つくば市 市民ホールやたべ 3.演題・講師   演題 「高齢者と勤労世代と若者の睡眠における問題点」   講師 筑波大学 国際統合睡眠医科学兼研究機構        教授 神林 崇 氏 【若者向けのお話】 睡眠外来での日々の臨床的な問題として、朝に起きられない中高生は多い。 睡眠時間と就床・起床時刻の加齢による変化をみても、10~20代は夜型が多く、50代以降になると朝型が増えてくる。 ≪睡眠不足症候群≫ 慢性的な睡眠不足。日中の眠気、集中力の低下、意欲に低下、いらいら感を呈する。学校と塾での勉強が忙しく、十分な睡眠時間を確保できず慢性的な睡眠不足状態になる。睡眠不足症候群では、休日の睡眠時間が長くなるという特徴。 ≪起立性調節障害≫ 学童期から思春期に好発。不登校にも繋がるために本人と家族にとって非常に大きな問題。規律時の血圧低下及び血圧の維持困難の問題が主。朝の起床困難、夜の入眠困難などの睡眠問題も併存していることはとても多い。睡眠相後退症候群とも診断が可能な場合が大部分。 ≪朝に起きられない中高生≫ 起立性調節障害と睡眠相後退症候群は別の疾患概念であるが、相互に併存していることが多くみられる。ともに視床下部の機能不全ではありそう。 「若年性起床困難症」などの病名が好適かも。 ≪朝起きられない中高生への対応≫ 早寝対策:夜は23時から24時前に寝てもらえるよう、眠前の薬剤を調整。 起床対策:抗精神病薬0.5‐1mgを朝か昼に内服すると翌朝に効く。 ≪不登校が主体の場合との鑑別≫ ・起床困難が主の場合、朝に起きられない場合でも途中から登校する。入院等して朝に起きれば登校。休日・休暇中も朝は寝ている。 ・不登校が主の場合は、入院等して朝に起きても登校できない。休日・休暇中は起きられる。 ・何が原因で不登校になっているのか?原因によってタイプが違うため見極めが大切。 【高齢の方に向けたお話】 ≪高齢者の睡眠での懸念と課題≫ ・レム睡眠の少ない人は、アルツハイマーの発症リスクが高い。 ・不眠症自体もアルツハイマーの発症リスクを高める。 ・ベンゾジアピン系の睡眠薬はレム睡眠を抑え、転倒は多めではあるが、不眠症を治療しないよりはした方が、アルツハイマーの発症や転倒は少ない。 ・認知症における睡眠障害の原因を解明し適切な治療法を確立することが課題。 ≪うつ病の基本症状としての睡眠障害≫ ・うつ病の9割に睡眠障害。その9割は不眠、1割は過眠。 ・不眠+食欲不振・体重減少ー身体症状=うつ病 ・一般的な睡眠導入剤で改善しない不眠症を鎮静系抗うつ剤で加療することは理にかなっているかも。 【勤労世代向けのお話】 ・日本人は短時間睡眠、長時間労働。 ・通勤時間が長いと、鉄道業の収益は増えGDPも上がるが、睡眠時間は短く、労働生産性は下がる。そして、睡眠不足症候群は増える。 ・日本は通勤手当があるが、それがよいとは限らない。新幹線通勤等、身を削って幸せになれない。海外では手当てがないため会社の近くに住む。企業も分散し、通勤時間の短縮や交通費削減→生産性、GDP上昇 その他、日頃抱えていた、様々な世代の睡眠に関する質問に対し、1つ1つ具体的な回答をいただくことができました。 「当日配布資料になかった質問への回答」 〇睡眠が短いと太る、という講演を聞いた記憶があります。生活習慣と睡眠と肥満とかの関係が聞いてみたいです。あと、睡眠で寝入りが悪いとか、すぐ起きちゃうとか悩みをかかえている人って多いと思うのですが、気軽に相談できる場ってあるのか聞いてみたいです。  短時間睡眠-->起きている時間長い-->間食増える-->太る 〇不眠=生活習慣病に加えて、不眠と生活習慣病との関係が聞きたいです。あとは最近よくあるスマートウォッチとかスマホで睡眠の測定するやつで、よく「あなたの睡眠は良くありません!」とか言われるのですが、あれって医学的に見たらどうなんでしょうか。中にはあれで相談しに行く人もゼロではないと思うのですが、先生の考え聞いてみたいかなぁと思います。    スマートウォッチとかスマホではあまり正しくないとは思うのですが、それでも良くないとの評価になった場合には、SUIMIN社のインソムノグラフでの検査は試してみると良いかもです https //www.suimin.co.jp    〇「リベンジ夜更かし」と発達障害とその対策について、不眠と発達障害について関係があるのか聞いてみてみたいです。  「リベンジ夜更かし」=日中に自由な時間を得られなかった人が夜の間に自由な時間を取り返そうとして夜更かしする    発達障害では 就寝時間の先延ばし が多いです   発達障害の中でも自閉症スペクトラムでは、不眠や睡眠相後退症候群が多いです  注意欠陥多動性障害では日中の眠気が多いです     〇更年期障害(女性・男性)における睡眠障害について、原因や対策など聞いてみたいです。  ホルモンバランスの変化によると思います 入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒が多いです 治療は不眠のタイプに応じて  〇短時間睡眠の人(ショートスリーパーと言われる人)は、不眠も感じずに質の良い睡眠と思っていたが、「良い睡眠が健康寿命を延ばす」に短時間睡眠の人も該当するのか。生活習慣病とは関連があるのか。聞いてみたいです。  実際の短時間睡眠の人は人口の2-3%で多くは、平日は5-6時間睡眠で週末に睡眠負債を返している人が多いのです。  本物の短時間睡眠の人は寿命が短くなることや生活習慣病になりやすいことはあまり無いと思います。   〇夜勤や仕事の都合などで睡眠が不規則になりやすい人に向けに、良質な睡眠の取り方や対策など聞いてみたいです。 高齢者だけでなく、産後や更年期における睡眠障害と改善方法も併せて盛り込んでいただけたらと思いました。  交替制の夜勤は睡眠が悪くなるのは、致し方ないのです。状況が許すのであれば、勤務時間の固定がむしろ望ましいのです。  ○あと、昼食後の午後や研修・会議となると強い眠気を感じるのは仕方がないことでしょうか。  午後に研修・会議があるとすれば、昼食後に10-15分で良いので、仮眠を取っておくと良いです。 ○知人で、ぐっすり眠るために市販の風邪薬を服用しているという人がいます。やめた方がよいと思うと伝えましたが、依存度や危険性についてお聞きしたいです。  市販の風邪薬には古典的な抗ヒスタミン薬が含まれているので、副作用としての眠気が顕著で、それを利用して睡眠薬代わりとして使っている感じと思います。 ドリエルも同じ原理です。