茨城県市町村保健市連絡協議会 事業報告 tag:https://www.iba-hokenshi.jp/ 茨城県市町村保健市連絡協議会 事業報告 2024-02-20 令和5年度土浦ブロック専門研究会【Zoom研修】 tag:https://www.iba-hokenshi.jp/, 2024-02-20:181 2024-02-20 令和5年度土浦ブロック専門研究会【Zoom研修】研修報告書 1 日時 令和6年1月12日(金) 13時30分~15時 2 内容    演題:「脳科学に基づいた特別な支援を要する幼児への関わり方        ~作業療法士の視点から~」 講師:アール医療専門職大学       リハビリテーション学部  作業療法学科副学科長 准教授 坂本 晴美 氏 【行方市療育支援での活動】 特に年長さん~10歳までをターゲットに・・・ こどもの脳は、 0~3歳:心が伝わる脳をつくる 3~7歳:勉強やスポーツができる脳をつくる 7~10歳:本当に頭のよい脳をつくる 【境界知能】 IQが71以上85未満で知的障害の診断が出ないこども 特徴 ・学習の困難さ ・対人関係やコミュニケーションの困難さ ・身の回りや社会生活の困難さ など 【脳機能の影響】 ・認知機能が「学習の土台」をつくる ・前頭葉機能の関わり・・注意・集中、意欲、思考、行動・感情のコントロール、応用 ・暴言や乱暴な行動への影響  前頭葉機能の低下の可能性(語彙力低下・生活習慣によるものの可能性)  →前頭葉を賦活化させること・・注意機能・ワーキングメモリを使うこと 【癇癪への対応】 怒っているときは刺激しない。機嫌がいい時に約束事をしてみよう ・怒りの特性を知る ・表現手段を見つける ・怒りの納め方を身に付ける 怒る→対処能力を身に付けるチャンス 【空間認知能力】 具体的には物(立体)がある方向や形状を瞬時に正確に認知する力のこと。 空間認知能力が高い特徴は、場の空気が読める・状況把握が早くなる・計画性が高い。 【マルトリートメント】 定義:虐待とは言い切れない大人から子どもに対するよくない関わり 最大7割弱の確率で次世代へと連鎖する 参考図書:「親の脳を癒せば子どもの脳は変わる」友田明美著 【レジリエンス】 精神的回復力・精神的弾力性→立ち直る力のこと 立ち直る力を上げるには家庭的特性がある。ペアレントトレーニングの効果として親の認知を変える レジリエンスを高める為に・・支援者は、保護者に知識・承認の言葉を与え、子どもにはその姿を見せること 【メタ認知能力】 自身を客観視する力のこと。自分が認知している物事を客観的に把握し、コントロールすること。 メタ認知能力が高いと、 ①自分の感情をコントロールすることができる  ②状況や物事に対して、冷静な判断と対処ができる ③周囲の人に対して適切な配慮ができる ④周囲の人や物事と適切な距離感を保つことができる ⑤柔軟性が高く、成長をし続けることができる メタ認知能力トレーニングは、瞑想、モニタリング(自分の欠点・課題の振り返り→受け入れ→問題・課題の設定) 令和5年度市町村保健師研修会【Zoom研修】 tag:https://www.iba-hokenshi.jp/, 2024-01-31:180 2024-01-31 町村保健師研修会事業報告 (1)講演「糖尿病カードシステムの活用について        ~糖尿病の保健指導に役立つツールと実例~」    講師 那珂記念クリニック 院長 遅野井 健 氏 糖尿病カードシステムとは,多様な患者ニーズに応じた療養支援をタイムリーに提供するための標準的指導ツールであり,昨年度から茨城県のモデル事業として位置づけられている。日本糖尿病協会では,糖尿病連携手帳やカンバセーションマップ,DVDなど様々なツールを提供しており,糖尿病カードシステムもそのひとつである。 糖尿病の治療において,重症化予防のため血糖のコントロールが必要な方には,糖尿病の知識など適切な情報提供を行い、行動変容を促していく必要がある。血糖のコントロールには,生活習慣の見直しをベースとして,薬物療法を行っていく。血糖コントロールが悪いと薬物療法がメインとなる印象があるが,生活習慣の見直しの比率が下がるわけではない。むしろ薬物療法の割合が多くなれば,生活習慣の見直しもこれまでより多く必要となってくる。常に生活習慣の見直しという土台の元に薬物療法を行って初めてバランスのいい療養指導ができる。  療養指導を行うためには,患者さんのバックグランドを把握し,この人に必要な情報は何か,どういった情報が必要か,どのような順番で伝えていくことが有効かといった計画性を考慮して指導を行っていく。それを一過性ではなく継続していくことが必要である。 糖尿病診療における理想的な療養姿勢とは,疾病を正しく理解し療養に必要な技術を把握した上で主体的にかつ前向きに取り組むことである。糖尿病があってもなくても同じような人生を送れるようにすることが最終目標であり,そのために医療者は,患者さんの現在の状況を正しく伝え,糖尿病教育を継続的に行えるよう支援していくことが求められる。個別指導,集団指導とそれぞれの制限や課題があるなかで,これらの課題を解決しより多くの人に適切な指導をするために作成されたツールが糖尿病カードシステムである。 糖尿病カードシステムでは,指導内容を細分化することで患者さんに必要な情報を取捨選択し,再構成することが可能となる。また,指導内容をシンプルにしているため,外来での待ち時間等を利用し10~15分と短い時間で指導することができ,さらに経験の少ないスタッフでも指導を行うことができるため指導者不足にも対応できる。指導を繰り返すことで教えられる内容も広がるためスキルアップツールとしても有効である。 指導した内容については,糖尿病連携手帳に記載することで,院内,地域の医療機関や行政保健師等関連機関と共有することができる。連携手帳を活用することで,専門施設での療養指導内容がオープンになり,かかりつけ医が教育入院の内容を把握できるなどかかりつけ医と専門施設との連携も可能となる。 (2)糖尿病カードシステム運用の実例とロールプレイ   講師 那珂記念クリニック   副院長 道口 佐多子 氏   臨床検査技師 塩澤 奈々 氏   管理栄養士 横田 由夏 氏   薬剤師 阿部 佳菜子 氏  糖尿病の指導を行う際には,糖尿病に関する知識や生活習慣に関することなど非常に多くの項目を伝えなければならない。その際に,約100種類のカードとカードのタイトルに対応したリーフレットから個々に必要な内容を組み合わせて指導できるのがこのカードの特徴である。  実際に療養指導を行う際には,治療方針を理解し共有しながら,生活習慣改善への前向きな姿勢を作っていかなければならない。また,療養指導は疾病概念や管理基準に準拠した自己の病状把握ができるようにすることを目的として行う。目的達成のためには,スタッフ自身も病態をしっかりと理解している必要があり,1枚ずつカードを理解することで自分自身のスキルアップにつながる。 糖尿病カードシステムを使用し指導する場面をロールプレイ(RP)で行う。 RP1:45歳,男性。検診で毎回指摘はあるが,自覚症状がないため放置。仕事が忙しく行く気もなく必要性を感じていない ・訪問前に対象に必要なリーフレットを郵送。リーフレットには対象に応じた手書きのメッセージを記載して郵送する。 ・家庭訪問の場面へ(RP)。 先に郵送したリーフレットを元に説明する。日常の生活状況を確認し,必要な保健指導を実施,受診へとつなげていく。話をしながら対象に必要な内容をリーフレットに書き込んでいく。また,話を聞きながらその人に必要な指導をする際には,新たにカードを追加し説明する。  実際に地域においては,忙しい,診断されたくない,無症状(危機感が持てない),社会的イメージが悪い,制限されたくないなどで,関わりを拒否されたり受入が難しいことがあるのではないかと感じ,受診勧奨対象者へのアプローチ案を那珂市に提案した。受診勧奨を行う際に必要なリーフレットを選択し,検査データやメッセージを手書きで記入し郵送した。訪問の際にも同じリーフレットを持参し,指導を行うことを提案した。健診から1年以内に受診される方は半数弱程度であり,4年以上かかる人もいる。 RP2 50歳,女性。罹患期間20年。HbA1c7.0%。随時血糖146mg/dl 医療施設から腎症重症化予防に向けて保健指導の依頼あり。 保健師の訪問 ・特定健診の検査値から腎機能が低下していること,腎臓の働きや腎臓の検査について説明 ・腎臓の状態,4期,5期に進まないようにしていく ・これからの目標値を決定 HbA1c7%未満,家庭血圧125/75未満,塩分制限 管理栄養士の食事指導 ・取り組まれている内容の確認 ・食事療法について ・水分の取り方について ・運動量や注意点について 糖尿病腎症に対し,腎症パスに基づき6ヶ月ぐらいに分け,病状の理解,生活行動変容の必要性を指導し,具体的な生活行動への支援とサポートを行う。 腎症重症化予防に向けては,かかりつけ医と行政との連携が有効である。医師が現状を説明した上で,行政に保健指導を依頼し保健師が保健指導を行う。腎症3期では,自己管理に問題があった患者が多い。この時期は合併症の進展防止が重要であり,悪化させないために個々の病気に合わせた生活のための指導を行う。 指導時にはリーフレットに指導内容を記載しながら話をする。リーフレットそのものに文字はたくさん書いてあるが,指導者が書いているところをじっと見ている。書いてくれているのだという想い,また後から見たときにこういう話をしたのだと振り返りにもなる。 令和5年度筑西ブロック専門研究会【Zoom研修】 tag:https://www.iba-hokenshi.jp/, 2023-10-23:177 2023-10-23 令和5年度筑西ブロック専門研究会(Zoom研修) 研修報告書  1 日時  令和5年 10月16日(月) 13時30分~15時30分                   2 内容    演題:「日本に必要なプレコンセプションケア」 講師:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター母性内科  診療部長 荒田 尚子 氏 【プレコンセプションケアとは】 女性やカップルに将来の妊娠のために健康管理を提供すること。男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うよう促す取組。 〈目的〉 ・若い世代の男女の健康を増進し、より質の高い生活を送ること ・将来より健康になること ・次世代の子どもたちをより健康にすること ⇒若い男女がより健康になって輝き続ける 【なぜ日本でプレコンセプションケアが必要なのか】 妊娠前からの生活習慣や病気が「妊娠・出産・赤ちゃんの健康」に影響する。 ①若い女性の栄養や活動性の問題  やせと肥満の二極化が始まっている。やせにより赤ちゃんの出生体重が低下すると、将来、赤ちゃんの高血圧、糖尿病、心臓病リスクが増加する。また肥満により妊娠合併症や世代を超えた肥満を起因とする疾病が継承される。  ②若者のヘルスリテラシー(健康情報についての情報リテラシー)が低い。 性と生殖に関する教育が、国際標準に未到達であることが要因と考えられる。 ③予防すべき先天異常を予防できていない。 葉酸サプリ、風しんワクチン、高血糖の予防などで未然に防ぐことが可能と考えられる先天異常対策を行う。 ④若者の自己肯定感が低い ⑤社会的問題:地域格差の広がり・ジュエンダー格差の狭まり ⑥妊娠リスクのあがっている女性の増加がしている 30歳代女性で高血圧は3.3%、糖尿病の可能性は4.4%が疑われるており、妊娠前から健康とは限らない。プレコンセプションケアで改善を。 根本にあるのはヘルスリテラシーが低い。さらに根本にあるのは性と生殖に関する教育の国際水準への未到達が、健康の知識や態度の悪さが原因と考えられる。うまく補いながら、プレコンセプションケアをしていくとよいと考える。 【日本で必要なプレコンセプションケアは?】 海外では母子保健の一部として捉えているが、日本では青壮年保健の一部としてプレコンセプションケアを考えている。 ・国際基準の包括的性教育を前学童期から補う必要がある ・若い世代のプレコンセプションケア ・病気を持った女性に対するプレコンセプションケア ・妊娠リスクの高い女性に対するプレコンセプションケア (高年齢、肥満ややせ、低出生体重で生まれた女性、社会的リスクの高い女性など) ・妊娠・分娩転帰に問題があった女性へのインターコンセプションケア 次世代を含めたライフコースアプローチとしてのプレコンセプションケア 高リスクの人は高いリスクの赤ちゃんを産みがちであるが、早い時期の介入により低リスクに軌道修正することができ、次の世代も健康になる(ライフコースアプローチ)。プレコンセプションケアをライフコースアプローチの一つとして、誰一人取り残さず切れ目なく、生涯にわたり介入していくことが大切である。 【インターコンセプションケアとは】 次の妊娠のためのプレコンセプションケアをいう。次の妊娠のためにも産後のフォローと介入が必要である。  ・肥満ややせの女性は、適正な体重管理 ・妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を合併した女性は、リスクの減少と定期的フォロー ・風疹抗体価低値は、風疹ワクチンの接種 ・胎児発育不全や死産などは、抗リン脂質抗体症候群の鑑別 ・神経管閉鎖障害の予防には、サプリメントを活用しながら葉酸の摂取 ・遺伝性疾患合併の児を出産には、遺伝カウンセリングなど     【プレコンノートの紹介】 5つのプレコンAction Action1 今の自分を知ろう Action2 生活を整えよう Action3 検査やワクチンを受けよう Action4 かかりつけ医を持とう Action5 人生をデザインしてみよう まとめ なぜプレコンセプションケア? 若者がより健康になって輝き続けること 現在の自身の健康:今輝くために 将来の自身の健康:人生100年時代、将来に備えて 将来の子どもの健康:将来の子どもたちのために 令和5年度水戸ブロック専門研究会 tag:https://www.iba-hokenshi.jp/, 2023-10-11:175 2023-10-11 令和5年度 水戸ブロック専門研究会 研修報告書 1.日時    令和5年8月1日(火) 14:00~16:00 2.場所    ザ・ヒロサワ・シティ会館 集会室1、2号 3.演題・講師  演題 「就学に向けての関わり方」  講師 一般社団法人 臨床発達心理士認定運営機構       代表理事 星 茂行 氏 【5歳児健診について】 5歳児健診は1996年に鳥取県にて発達障害の早期発見につながるものと期待され、始まる。  5歳児健診を始めるためには準備が必要。医師の診察に決まった形式はなく、内科的な診察だけではなく、会話の成立具合、手指の巧緻性、指示に従う様子、情緒の安定性、コントロールする力などを診察する項目が必要である。下記のような項目を確認する。  1 会話  名前、所属の保育園・幼稚園、組の名前、担任の先生の名前、給食で一番おいしいもの、母親の料理で何が一番おいしいか等尋ねる。  2 動作模倣  手を横に挙げる、前に挙げる、目をつぶって立てるか、片足立ちできるか等  3 物の用途を聞く  靴、帽子、お箸、本、時計はなにするものかな?  4 比較概念を聞く  お湯は熱い、氷は?  5 左右の確認(4歳位で分かるようになる)  6 左右を使った構文の理解  右の手をあげて、右の足をあげて  7 安静閉眼  手を膝に置き、よーい初めの号令で眼を閉じさせる。(20秒間閉眼が可能)  8 じゃんけん、しりとり(じゃんけんは90%が可能。じゃんけんができないと学校に進学した時に遊べない問題が出てくる)  9 読字(2文字のひらがな単語を3つ)  あお、はな、等まずは読めることが大切。読めるようになってその後、書けるようになる。 身体発育の確認と、保育園や幼稚園などの集団生活の中で気がつく「落ちつきがない」「動きがぎこちない」「興味に偏りがある」などといったお子さんが抱える課題や困難さを、保護者の方と関係機関が一緒に確認し、安心して生活を送れるように適切な支援を行う。 実施したら、その後どう支援に繋げるのかが大切。実施したままにはしない。 【就学時健診について】 初等教育に就学する直前に行われる健康診断。就学前年度の11月30日までに実施される。身体の疾患や、知的発達の度合いが検査される。就学に問題がない場合は、普通学級に就学。課題が見られる場合は、就学相談を受けるよう指導されることが多い。5月頃から就学時相談を実施している場合もある。 【就学相談について】 教育委員会などで、障害のある場合や、小学校での生活について心配なことがある場合、就学相談(就学する学校や学級についての教育相談)を行っている。 【情報の引継ぎについて】 保育園や幼稚園で個別の配慮を受けていたり、医療や療育などの専門機関に通っていたりする場合は、これまでの支援に関わる情報を小学校に引き継いでおくことが大切。かかわりのあった先生や支援者と一緒に、小学校へ引き継ぎたい情報をまとめておくと良い。 支援情報をまとめて保存するための「サポートファイル(サポートブック)」がある自治体もある。サポートファイルは保護者が持ち、次に繋げられるようになっている。園の情報、今までの健診の記録を記載することで、異なる機関で同じ質問を保護者にする手間が省ける。親の同意書等で、個人情報保護は徹底して行う必要がある。 【アイリスシート(就学支援シート)の活用】 就学前機関から小・中学校への連携の際に活用。情報は療育機関や保育園・幼稚園でアイリスシートを作成し、情報共有に活用する。また、そのアイリスシートを保護者が入学前の学校説明会時に学校へ提出(遅くとも2月までには)することで、必要な情報が共有され、進 学先での個別計画の作成に活用できる。小・中・高と利用できる。 【自閉症児の特徴】 〇感覚の過敏性がある  ・触覚過敏・・スキンシップを嫌う、触られるのが苦手  ・聴覚過敏・・集団騒音、泣き声、耳ふさぎ  ・味覚や嗅覚・・偏食等 〇新しい場面やパターンが崩されることへの抵抗がある →聴覚でなく視覚で情報を提示(TEACCHプログラムなどが有効) 〇状況理解の難しさとコミュニケーションのつまずきがある  ・細かく見ることは得意、いくつかの情報を関連付け全体を理解するのは苦手 →絵カードや文字などの視覚的伝達手段が有効 〇模倣やみたて、共同注意など前言語機能のつまずきがある 【アスペルガー障害について】 〇言語発達そのものの遅れはない 〇発達の偏りが多い。  ・人の気持ちが分かりにくい  ・独り言が多い  ・比喩などが分かりにくい  ・場の空気に合わせられない  ・突然発言する  ・自分勝手な行動をとる  ・自分の決まりを守ろうとし、こだわる 〇運動に苦手さがある 〇LDとアスペルガー障害が重なる部分や、ADHDの注意力散漫さ、衝動性、多動性と重なっていることが多い ・・こだわりがあって多動なのか、多動があってこだわっているのか、見極める。 【事例検討】 言葉の遅れがある幼児(6歳2か月) ・就学時健診で言葉の遅れを指摘。名前の認識はある。 ・おままごとや鬼ごっこなど好きな遊びを通してコミュニケーションが取れる ・鍵盤ハーモニカはできないが興味がある ・4まで数えられる。20ピースのパズルができる。手先は不器用。知的な遅れか、手先の問題か分からない。 ・会話でのやり取りは苦手だが拒否はしない ・保護者は特別支援学級に就学するか悩んでいるが、母親は困り感を感じていない。 以上の事例に対しどうアプローチするかグループワークを実施した。 (グループからでた意見) ・集団での生活はどうなのか、園からの情報収集 ・母の気持ちに寄り添う。母が現在感じていること等話を聞く ・特別支援学級などの情報提供 ・母は困り感がないが、児はどうなのか。困っていることがないか確認 ・数字や手先の不器用さは客観的指標があると母が理解しやすいのではないか。 ・得意なこと、苦手な事の詳細を確認するため発達検査の実施を促す。 ・療育等利用できるサービスの提案を行う。 ・就学時は学校への情報提供を行う。 等、様々な意見を共有することができた。 令和5年度第1回専門研究会(全体) tag:https://www.iba-hokenshi.jp/, 2023-10-11:176 2023-10-11 令和5年度 第1回専門研究会(全体) 研修報告書 1.日時    令和5年5月26日(金) 13:00~15:00 2.場所    茨城県市町村会館 3.演題・講師  テーマ 「今、保健師の地区活動を考える」  演題1 「地区の特性に合わせた地区保健活動について~地区カルテの活用のすすめ~」   講師 東北大学大学院医学系研究科 公衆衛生看護学分野       教授 大森 純子氏  演題2 「地区保健活動 仙台スタイルの紹介」   講師 仙台市 健康福祉局健康政策課       課長 佐野 ゆり氏 講演会  「地区の特性に合わせた地区保健活動について~地区カルテの活用のすすめ~」   【保健師の地域づくり・保健師の保健活動で大切な視点】  市町村それぞれの業務分担が「地区担当制」でも「業務担当制」でも、地域を意識し、「地域の人々の暮らしや健康を守り、人々が望む生活を目指して行われる活動」はすべて「地域づくり」といえる。 〇地域に心が向いていること 〇地域のことを考えながら人と直接話せること が保健師の強み  保健活動のなかで、地域全体をとらえる視点や日頃の活動を地域全体に結び付けて考える視点が大切である。保健活動のツールとして「地区カルテ」を活用することで、日頃の地区活動について目的から成果まで言語化・可視化できる。 →地区を意識したプロセスは全て「地区活動」といえる。 日々の活動を地域と結びつけて考えることで、地域を意識した「気づき」を得ることができ、「気づき」の蓄積から新たなアイデアやアクションを生み出せる。また「気づき」に蓄積は地区の地域診断を深め、社会資源や住民・関係者・関係機関との協働ネットワークを拡充できる。 【地区保健活動のポイント】 地域・地区に出向くことはもちろん、所内での電話対応や事務を通して、地域・地区活動を行うことができる。以下3つのポイントを意識し、自己点検する。 ①住民とのつながりを求める活動 ・地域・地区に出向くことを意識している ・住民の声を聴く努力をしている ・住民から地域・地区の情報を得ている(独りよがりな活動になっていないか) ②地域・地区の特性を考えた活動 ・暮らし、文化、風習、自然環境、地域資源(目に見えるもの・見えないもの・数字として表れるもの)を考えて活動している ③地域・地区という単位を意識した活動 ・個人の支援を地域・地区活動に発展させている ・地域・地区の将来の姿を考えて活動している ・地域・地区診断に基づいて、重点課題や支援方法の検討を行っている。 ・保健師の存在や活動、社会資源を住民に対して知らせる努力をしている。 【地域・地区活動による保健師自身、地域・住民への認識】 地域・地区活動は保健師としての充実感、地域・住民への愛着、地域・住民との一体感等への効果をもたらす。以下のポイントを自己点検する。 ①保健師としての充実感 ・保健師としての活動が楽しい、達成感を得られる、満足している ②地域・住民への愛着 ・地域・地区への愛着がある、住民に対して何ができるか常に考えている、住民とつながることができてうれしい ③地域・住民との一体感 ・住民から頼りにされている、相談しあえる関係である、住民と共にある存在である、地域・地区の住民の間につながりができていると思う 【地域・地区活動を促進する環境づくり】 地域づくりを行っている保健師は、保健師であるというアイデンティティを持っている。地域づくりを行うことが保健師の能力を培うことに繋がっている。地域・地区に出向くことができる環境が大切。訪問等明確な目的があり出向くことはもちろん、明確な目的がなくとも地区にでることも必要。以下のポイントを自己点検する。 ①組織の方針と明確さ ・自治体全体で保健活動と連携する地域・地区づくりの方針がある ・上司や統括的立場にある保健師に、保健活動についての明確な考えがある ・保健師が地域・地区を集団と捉えて保健活動を行うための研修を受ける機会がある。 ②地域・地区に関する情報共有の機会の確保 ・地域・地区の課題を他の保健師、他職種、関係機関と共有する機会がある ・定期的なミーティングがある ・日常的に保健師相互の情報共有・相談支援の機会がある ・保健師の地域・地区活動について、地域住民に対して広報、知らせる機会がある 【地区カルテの活用】  日頃の保健活動を地域・地区を結び付け、他にはない特性を掴み、地域・地区を意識しながら活動することが自然とできるようになることを目指す地区保健活動のツール。地区がどうなりたいかをまず話し合い、決定してからカルテを活用する。カルテは経年的に引き継がれることを想定している。カルテの活用で、より効果的な「地区特性に応じた保健活動」を展開できる。 地区カルテは①フェイスシート②日々の記録③サマリーシートで構成されている。 ①フェイスシート  地域・地区の概要を大まかに理解するためのシート。成り立ち、地理的特徴、住民構成など8項目あり、地域・地区活動を通して得られた経験データ含めて記載・蓄積する。気づいたときに随時記録し、「気づき」や情報を蓄積していく。 →「気づき」から始め、地域・地区の特性や課題を焦点化して、明確化していくためのもの ②日々の記録 活動の中での「気づき」を積み重ねるためのシート。居住する住民の暮らしの視点から現状を把握する。重要だと思う内容はフェイスシートに反映させ整理。気づきに対して「考えたこと」「行ったこと」を記載することで、活動記録として残す。 ③サマリーシート 強み・弱みを捉え、健康課題を抽出し、実現可能性を考えながら優先順位を決定し、地域・地区活動の実施・評価の具体的な計画を立てるためのシート。 【地区カルテ共有による活用】 ・日々の活動の中での気づきや疑問を、主・副担当保健師、エリアの近い保健師間で共有する。 ・管理者を含めて、定期的な共有の場を持つ。 公演会 「地区保健活動 仙台スタイルの紹介」  業務と地区の併用で担当を決めていたが、個別ケースの増加・国や県からの業務が増加したことにより、地区に出ることが少なくなったことから、併用での担当制は継続しつつ、地区分担制を強化した背景がある。 【地区保健活動マニュアルの作成】  仙台市の地区保健活動推進のためにマニュアル作成ワーキングを立ち上げ、大森教授にアドバイザーを依頼。大森教授からは「継承にとどまらない仙台市の強みを生かすSendai styleの地区保健活動を創りましょう」とアドバイスを受ける。 【マニュアルの内容】  1仙台市地区保健活動マニュアル作成趣旨  2用語の定義・・・共有するために共通理解とすることが必要  3仙台市が目指す地区保健活動   ・保健活動の現状と課題   ・仙台市が目指す地区保健活動   ・地区保健活動の主役は住民   ・地区担当制を強化した地区保健活動のスローガン  4地区保健活動の進め方  5Sendai styleの保健活動   ・担当地区の特性や健康課題の明確化(みて、きいて)   ・担当地区の健康課題の共有化(つないで、うごかし)   ・地区の特性に応じた活動の展開(つくって、みせる)  6地区担当制のツール   ・地区カルテの構成   ・地区カルテの活用  7地区担当制推進の仕組み   ・部署横断的会議   ・統括保健師会議   ・コーディネーター会議  8地区保健活動事例集 忙しい業務の中で、情報から分析をするまでの時間がとりにくいため、地区カルテを使用することで、地区の愛着がわいたり、保健師としての力も伸びる。しかし地区カルテをまとめることを目的とはせず、地区に出て住民とふれあい、日々の記録をつける。訪問に行った際に坂が多くベビーカーだと歩くことが大変、バスがなかなか来ない、等ちょっとした気づきで感性を高める。 【地区保健活動例】 〇地区ブロック会議について 区内を各地区の特徴ごと大きく数ブロックに分け、3課の地区担当保健師が集まり、地区ブロック会議を開催。地区の情報共有や地域づくりを話し合う場となっている。 地区保健活動は「見て」「聞いて」「調べて」「つないで」「動かし」「つくって」「みせる」。住民同士の「見守り活動」や「なんでも相談会」、「手洗い講座」「地区活動再開支援」など地区の住民のニーズに応じて活動を展開している。 【地区保健活動マニュアル活用の効果】 1地区保健活動が活発になり新たな展開がある 〇地区への愛着・責任感を持って活動を展開 〇地域の関係者をより多く把握し関係を築いている 〇新たな企画や展開がなされるようになった 2人材育成に繋がっている 〇他課保健師等と地域へ出向く機会が増えた 〇自身の保健活動を振り返る機会となる 〇地区保健活動に対するモチベーションアップ 〇身近なロールモデルが増える 【地区保健活動を推進するために】 1地区保健活動を推進する方針・体制が明確であること  →地区保健活動を各区要領に位置付けたことで、組織的な体制が整い保健活動が促進された 2地区に関する情報共有の機会の担保  →他課地区担当との情報共有や課題に関する話し合いで、自分の地区を意識して活動することに繋がる 3「地区」の捉え方の認識  →「地区」は個別支援のための割り振りという認識から、地区そのものが支援対象であると捉える 4住民との対話を大切に  →話をしようとする姿勢、聞こうとする姿勢が大切